第二章「クルセイド編」
第十二話「平穏な日々に」
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キリギリスやバッタと言ったような虫が一匹もいない清潔なアスファルトの上を、企業戦士達がそれぞれの職場に行くために歩く。その大勢の人々が一斉に動いても誰一人として転んだりしないのを神秘的と言う人もいるらしい。その通勤ラッシュの一時間位前に大抵の家では目覚まし時計がなるのだがこの男にとってはそれは例外で、この通勤ラッシュ自体の歩く足音自体が目覚ましとなった。人、これを寝坊と言う。
その男は窓を見て、その後その部屋にあった鏡を見て、大きな欠伸をした。
「…ああ、俺寝オチしたのか。」
既に下の方からはカタカタと言う無機質な音が聞こえた。キーボードを叩く音だろう。本来ここは男にとっての寝室ではなかった。いそいそとベッドから這い出た。
突然、枕の横にあった腕輪が喋りだした。
「今日も遅いですね、マイロード。」
腕輪は『も』の部分を強調した。
「モール君はもう仕事を始めてますよ?」
男は苦笑して、その腕輪を片手に弄んだ。
「も、ってなんだよもって。俺何時もそんなに遅いか?ドラゴンソウル。」
ドラゴンソウルと呼ばれた腕輪は躊躇うことなく「ええ。」と言った。
「ジャック君も99%の確立で怒っていますよ。マイロード、エレギオ。私のアラーム機能に封印指定をかけてまで寝坊したいんですか?自分で起きれるようになる、なんて戯言はもう聞きたくありませんよ。」
「あいあい。」
「返事は一回で『ハイ』です。」
「わーったっての。...全くお前もジャックもここ最近本当に優しくないよな。もっと主人を大切にしてくれよ。」
「日頃の行いを良くして頂けるのでしたら、善処します。」
やれやれと言う顔になって男...エレギオは弄んでいた腕輪、ドラゴンソウルに右手を通した。
「さて、お前の言う通りジャックも怒ってるだろうし、行きますか。」
そう言って良し!と腹に力を入れるように右手の拳を固めて左手に掴ませた。その後鏡のそばに置いてあった櫛をつかって手早く自称、自慢の黒髪を整えて近くの階段を下りていった。
降りた先では少年がコンピューターを常人の目には全く追いつかない速さで操作していた。少年はエレギオをみてニヤッと笑って操作を止めた。少年は鼻が低く出っ歯、つまりネズミの様な顔をしていた。
「おはよう...じゃあねえっすなエレギオの兄貴、今日もジャックさんに怒られまっせ。ドラゴンソウルにもな。」
「もうドラゴンソウルには怒られたっての...お前はおはようだなモール。特に新しい情報は入ってないみたいだな。」
ネズミ面の少年モールは高い声で「そうっすね」と言った。
「スプーキーの奴も特になんも言ってなかったっすからねぇ...ああ、アイツから一応伝言です。『今日
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