巻ノ百十八 方広寺の裏その八
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「それでは」
「必ずですぞ」
「お伝え下され」
「切支丹のことも」
「国替えと江戸入りのことも」
「全てです」
「くれぐれも」
二人は念を押す様にして片桐に言いそれからこの三つのことについて細かく話していった、しかし。
家康はだ、大蔵局を自ら出迎えてだ。
宴を開いてだ、こう言った。
「では」
「宴ですか」
「楽しまれよ」
こう言うのだった。
「存分にな」
「あの」
大蔵局はにこやかに笑い自分の前にいる家康に警戒する顔で返した。
「そう言われましても」
「方広寺の件じゃな」
「そのことですか」
「まずはそれをお話して頂けるか」
家康もこれは忘れていなかった。
「是非」
「はい、それでは」
大蔵局も頷いてだ、方広寺の件の大坂からの釈明を話した。すると家康は聞き終えてからすぐに答えた。
「あいわかった」
「それでは」
「その件承知した」
こう答えるのだった。
「しかとな」
「そうですか」
「よしとする」
上からの言葉だが大蔵局はこのことには気付かなかった、彼女もこの程度の政の勘も備えていないということでは主である茶々と同じだ。
しかし家康はそのことにはあえて何も言わずそのうえで大蔵局を自ら宴を開かせてもてなした、そして飲みながらだ。
大蔵局にだ、こう言ったのだった。
「茶々殿はお元気か」
「はい」
大蔵局は宴の中で上機嫌で答えた。
「至って」
「それは何より。それでなのじゃが」
「はい、何か」
「切支丹は出来る限りじゃが」
何気なくを装いつつ彼等のことを話に出した。
「抑えて欲しい」
「といいますと」
「大友家のことはご存知か」
「あの九州にあった」
「そうじゃ、あの家は切支丹を信じておったが」
それでもというのだ。
「しかしな」
「確か他の教えを否定して」
「神社仏閣を壊して回っておった」
「では」
「あまり切支丹に肩入れするとな」
それがというのだ。
「よくはないであろう」
「では切支丹は」
「大坂にも神社仏閣が多い、一向宗の者も多い」
信長と血みどろの戦を行い家康自身とも戦った彼等のことも話に出した、大坂城が石山御坊の跡地に建てられたことは大坂にいれば誰でも知っていることだからだ。例え政に疎い茶々でもだ。
「だから余計にな」
「切支丹を大坂に入れてですか」
「いざかいがあっては民が困る」
その彼等がというのだ、これは家康の本心でもある言葉だ。
「だからな」
「切支丹は大坂に入れぬ」
「そうされてはどうか」
大蔵局の神経を逆撫でしない様に穏やかに話した。
「このことは」
「それをわらわから茶々様にですか」
「お話してもらいたいが」
「わかりました、それでは」
「このことお頼み申す
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