0270話『小さい提督と明石の決意』
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
《そうなんですけど、やっぱり私のせいだと思うと……》
「榛名さん、それは違いますよ。提督は榛名さんのそんな泣き顔が見たいがためにこんな事をわざわざお願いしてきたわけではないんですから。いつか榛名さんが自由になれる事を祈って私に薬の開発を依頼してきたんですから榛名さんがそんな顔をしたら提督もどうしたらいいか悩んでしまいます。ですからもっと前向きに行きましょう」
《そうですね……わかりました》
「はい。それでは手早く提督を運んでしまいましょうね」
「了解よ。運ぶのは私に任せなさい」
提督の小さい体をこの中で一番力がある山城が持って運ぶ。
でもその際に山城はある事を思った。
提督はこんなに軽いのね……と。子供なのだから当然だけど、もとは一般人だった提督にはこの世界の過酷な状況で提督という重い地位を与えられて無理をしていないかと山城は今まで不安に思っていたのだ。
いつもみんなの前では気丈に振る舞う提督だけど心の中では辛いと感じているのではないか?と提督の立場になって考える事もある山城だから今は子供になってしまった提督は一時的に重圧から解放されているのでは……とも思う。
だから、
「いつも守ってもらっているんだから今この間だけは私達が守るからね。提督……」
そう呟いた。
そして時間は朝八時過ぎくらいになって、
「うゆ……?」
小さい提督は目を覚ましたのか目をパチクリとしている。
榛名はそれで安心してもらえるように笑顔を浮かべようとしたんだけど、
「榛名。今回はまた提督が記憶がない場合があるわ。だから最初は私にやらせて……。どうせ前の時は『どうして透けてるの……?』とか言われたんでしょ?」
《うう……その通りですから何とも言えないのが悔しいです。わかりました》
二人はそれで話が終わったのか提督に話しかけようとするんだけど、
「あれ? 山城お姉ちゃんに榛名お姉ちゃん……? 私、また小さくなったの?」
「えっ……? もしかして、あなた……前回の記憶を持っているの……?」
「えっと……うん。最後に薬を飲んだところまでは薄っすらとだけど覚えているかな……」
そう話す提督に遠くでそれを聞いていた明石が近寄ってきて、
「これは驚きですね……」
「あ! 明石お姉ちゃんだ!」
「はい。提督、ごきげんよう。ですがこれはある意味で一つの問題が解決してきましたが、新たな問題が浮上してきましたね」
「どういう事……?」
「わかりませんか? 小さい提督はこうして前回に小さくなった時の記憶をそのまま維持しています。でも、もとの提督に戻った時にその間の記憶はどこに保管されていたのか……? これはもうもう一つの人格の覚醒とも言うべき問題ですね」
「私……やっぱり問題なの……?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ