番外編 星雲特警とソフビ人形
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を否定する。それが、あんたが『電光』に望んだ在り方、ということか」
「ガキの頃は、憧れたもんさ。このクソッタレな世の中を吹き飛ばしてくれる、カッコいいヒーローが現れてくれねぇかな……ってよ。今が一番、そんな奴らが必要な時なんだよ。それを実現させられるのは、俺だけだった」
「火鷹太?を拒んだのも、それが理由?」
矢城とヒカリの追及を受け、蒲生は再び空を仰ぐ。かつて対面したことのある、悲しみを知り過ぎた貌を思い浮かべ――彼は、大仰に肩を落とした。
「……『電光』はな、ただの兵器になっちゃいけねぇんだ。今までの歴史とは違うってことを、国民に知らしめるための『希望』なんだよ。このクソッタレな連鎖を終わらせて、人々の疲弊を取っ払うための、イカした『正義のヒーロー』なんだ」
「……」
「だからその中に……あいつを入れるわけにはいかねぇ。戦うことでしか、自分の正義を証明できねぇ奴に電光スーツを渡すわけにはいかねぇのよ。『兵器のヒーロー』はもう、お呼びじゃねぇのさ」
――蒲生は「電光」の隊員を選出する際、能力の他にある条件を設けていた。
それは、ヒーローとしての在り方を分かっているか否か……というもの。古き良き特撮のお約束に理解があるか、という奇妙な問い掛けであった。
電光レッドの選考試験を受けた当時、火鷹太?はそれに理解を示していなかったのである。見敵必殺を鉄則とする星雲特警だった彼には、特撮のお約束など知る由もなかったのだ。
――そして彼は、電光レッドの選考から外され。解っている天羽宙が、正式なレッドとなった。
蒲生は、太?の詳細な経歴を知っているわけではない。「シルディアス星人の災厄」を生き延びた戦災孤児であることと、政府高官に養子であるということまでしか、公式な記録もないのである。
――だが、それでも。奥深く刻まれた悲しみを滲ませる、彼の眼は。蒲生にその過去の傷を悟らせるには、十分だったのだ。
全てを知っているわけではない。それでも、その眼を見れば過去の痛みを慮ることはできる。だからこそ蒲生は、太?を「電光」には入れなかったのだ。
「……だいたい俺はなぁ、ああいう湿っぽいメンヘラ野郎が一番嫌いなんだ。あいつは森のパトロールにかこつけて、一生自然と戯れてるくらいが丁度いいんだよ」
「素直じゃないな、あんたも」
「全く」
――そんな蒲生の不器用さに、矢城とヒカリはほくそ笑む。その部下の反応が気に入らなかったのか、蒲生は不遜な面持ちで鼻を鳴らしていたが……その口元は、穏やかに緩んでいた。
「事実を言ってるだけだ。……おぉ、そうだ『電光』で思い出した。最近、旧い悪友の店が面白れぇグッズを仕入れたらしいんだ。お前も来るか?」
「……仕方ねぇな全く。いい歳こいて玩具屋巡り
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