番外編 星雲特警とソフビ人形
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――20XX年、5月上旬。
学校が休みであり、孤児院のバイトもないGWのこの日。火鷹太?は、大勢の人々で賑わうデパートに訪れていた。
「おーい、太?! 何してんだよー! 置いてくぞー!」
「はいはい。今行くから待っててね、晄くん」
彼の腰ほどの背丈しかない、幼い少年を連れて。
◇
今年に入って、5歳を迎えたばかりである少年――真弓晄は、買い物カゴを持つ太?を尻目に玩具コーナーを駆け回り、目当ての品を物色している。そんな腕白少年の溌剌とした立ち回りに、太?は苦笑いを浮かべていた。
――地球守備軍出身である、政府高官。彼の養子となった太?は、仕事で中々家に帰れない父に代わる形で、こうして晄とGWを過ごしているのだ。
「あっ、あっち見たい! 太?、あっち行くぞあっちー!」
「えっ……ちょ、もう晄くんっ。あんまり走ったら危ないよ、こら待ちなさいったら」
「シルディアス星人の災厄」の後に生まれた晄は、惨劇が起きた当時を知らないためか――活力に溢れる腕白な少年に育っており、いつもこうしてあちこち駆け回っては太?を振り回しているのである。
彼曰く、「後からウチに来たんだから太?はおれの弟! おれが兄ちゃんだからな!」ということであるらしく、いつも「年上の弟」である太?の前で、えへんと胸を張っているのだ。
一方、太?も晄のことは実の弟のように可愛がっており――実子と養子ではあるが、2人は血を分けた兄弟のように良好な関係を築いている。
「あったぁ! メイセルドのソフビ! ……あれ、でもユアルクがねぇや。しょうがねーなー、他の店回ろうぜ」
「……うん、そうだね」
その理由は――晄の生い立ちに関係していた。
太?が持っているカゴの中に、リアルな等身を再現した「星雲特警メイセルド」のソフトビニール人形を入れた晄は、「星雲特警ユアルク」の人形を探し始める。
そんな彼の背中を、太?はどこか物鬱げに見送っていた……。
◇
都内有数のデパート。その近くにある玩具屋数軒。それら全てを回り、目当ての人形を探し続けていた2人だったが……思うような成果には至らなかった。
玩具屋を渡り歩くうちに、いつの間にか都会の喧騒から離れ――寂れた商店街に出てしまった晄は、地団駄を踏む。
「ちくしょー! なんで何処にも売ってないんだよー!」
「ユアルク……って言ったら一番有名で人気だし、まして今はGWだからなぁ。この時期に買う親子ばっかりなんだろうね」
「むむぅ〜! まだだ、まだ諦めないぞ! 絶対見つけてやるぜー!」
だが、晄はまだ諦める気配を見せず、意気揚々と歩み出して行く。その粘り強さに感心しつつ、「弟」らしく彼の後ろを
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