第44話 袋詰めの古我知さん
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そうに出てきた言葉に、俺は生返事。こんなマヌケな格好を見せられたら、「俺の戦いがなんだったのか」と考えさせられてしまいそうだ。
古我知さんは「いやぁ〜参ったなぁ〜」といわんばかりの苦笑いを浮かべており、まるで「肩の荷が降りた」かのような表情になっている。
自分のやり方に迷いがなかったら、こんな顔はできないはずなんだが……。
彼はしばらく俺の顔を見て笑いつづけていたが、やがてそれを止めると、慈しむような目を俺に向けた。
「どうやら、僕は『悪の親玉』でいるには、どうにも甘すぎたみたいだね。生きた君とこうして会えることを、喜んでしまううちは」
「……確かに、そんな悪役はいらねーな。あんた、着鎧甲冑を兵器にしたかったわけじゃなかったのか?」
「もちろん、兵器転用に向けた意気込みは真剣だったさ。だけど、割り切ったつもりでも、迷いもあったんだね。家族同然に育ってきた人達を裏切り、関係のなかったはずの男の子にまで、ここまで立ち向かわれたから」
……彼は着鎧甲冑を兵器にするために、家族を裏切り、他人を巻き込んだ。
結果として、自分は敗れて計画は頓挫したけど、家族も他人も含めて、誰ひとり死ぬことはなかった。
そして今、本人は笑っている。
きっと、本当は自分の目的よりも、家族の安否の方が優先順位が上になっていたんだろう。でなきゃ、負けたのにこんな顔はできない。
「君と君のお兄さんを見てるとね。度々考えるんだよ。僕は家族を傷つけ、裏切り、なにをしてるんだろう、ってね」
「――その兄貴も、あんたを心配してる。あんたがまだ兵器にするつもりでいるなら、兄貴に代わって俺がぶちのめすからな」
「ははは、それは心強いなぁ。君に見張られたままなら、もう樋稟ちゃん達を傷つけずに済みそうだ」
古我知さんは俺から視線を外すと、今度はジッと俺達のやり取りを見守っていた救芽井の方を見る。
「君の『ヒーロー』、かっこよかったね。お父様が夢見た特撮ヒーローそのものだったんじゃないかな?」
……え、なにそれ? もしかして着鎧甲冑のディティールが妙にヒーローっぽいのって……?
俺がその思案に暮れるより先に、救芽井が顔を赤くして声を荒げた。
「ちゃ、茶化さないでください! ……それより、心変わりはされていないんですか? 剣一さん」
「兵器転用しなければ、着鎧甲冑が発展の契機を失う――という考えは今でも同じさ。ただ君達に敗れ、その狙いが日の目を見ることはなくなった……というだけさ」
――あくまで、考え方を変えるつもりはないってことなのか? 強情な……。
「開発競争に敗れ、世界に進出する前に埋もれてしまった技術は、世の中に溢れている。僕もそんな中の一部だったってことさ。君達だって、こうならないとは限らないんだよ」
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