第18話 俺がボコられるのは兄貴の仕業
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「おっ……! 兄貴からだ」
まさかの救世主! さすがにケータイに鳴り出されると矢村も手を出しづらいようで、しぶしぶ振り上げていた拳を下ろした。
あ、あぶねぇー。もうちょっとで強烈な鉄拳が、俺の脳髄にスパーキングするところだった。
俺がシバかれる流れを断ち切ってくれたことには、兄貴には感謝せざるを得まい。もう足を向けて寝られないな。
さて、せっかく助け舟を出してくれたんだから、早く出てやらないとな。俺はピピピとうるさく鳴るケータイを開き、通話のボタンを押――
「ちょっと待ちなさい!」
――すってところで、救芽井がいきなり叫び出した!?
「おわぁい!?」
思わずすっころび、後頭部を床にスパーキィング! お、俺のなけなしの脳細胞がァァァァッ!
「ってて……なんだってんだよ!?」
「変態君のお兄さんと言えば――夕べ、剣一さんと一緒にいたそうね」
「あ、ああ。別に何かされたわけじゃなさそうだったけど」
救芽井は顎に手を当て、しばらく考え込むようなそぶりを見せる。
「そうね……だけど、あなたのお兄さんから彼の思惑に近づける可能性もあるわ。剣一さんのことについて、それとなく聞き出してくれないかしら?」
――また難しい注文をしてくれるなぁ。まぁ確かに、古我知さんと兄貴の間にどんなやり取りがあったかは気になるところだし……。
「それから、私にも話がわかるように、スピーカーホンにしておいて。私がここにいるっていうことも、向こうには伝わらないようにね」
「へいへい」
どうやら、救芽井はこれを機に古我知さんの情報を本格的に仕入れるつもりらしい。目の色が完全に「救済の先駆者」としてのお仕事モードに入ってる。
救芽井は矢村に目配せして、兄貴に存在を悟られないよう、静かにするよう促している。その気迫に圧倒されてか、矢村はやや怯んだ表情でコクコクと頷いていた。
さて、それじゃ言われた通りにスピーカーホンに設定して……と。んじゃ、電話に出るとするか。
「ほい、もしもし?」
『おう、龍太かぁ!? 聞いてくれよぉ、今日の説明会でハキハキ質問してアピール大作戦が成功しちゃってさぁ! 企業の人とお知り合いになっちゃったんだぴょーん! こりゃあ就活も一歩リード確実って感じィ!? 今日は春が来ない兄弟同士、パーッと騒いじゃおぉぜぇ!』
……う、うぜぇ。つか、「春が来ない」は余計だコラ。兄貴は自分も「春が来ない」とか言ってるが、それは幻想だ。正しくは、本人がそれほどまでに恵まれてることに気づいてないだけだ。
どうやら就活が好調だという旨の報告らしいけど、こんなアホなテンションの兄貴はなかなか見られないな。よほど今までの就活が散々だったと見える……。
「ぷっ、くくっ……!
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ