巻ノ百十八 方広寺の裏その三
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「無暗やたらにな」
「それで、ですか」
「常高院殿が言われても」
「それでもですね」
「茶々様は聞かれぬ」
「だから切支丹のこともですか」
「意固地になられますか」
まさにというのだ、そしてだった。
その話をしてだ、幸村は十勇士達にあらためて言った。そのあらためて言ったことは何かというと。
「このままだと戦になる」
「大坂と幕府の」
「それになりますか」
「方広寺のことを表として」
「その実は切支丹のことで」
「茶々様の強情さとそれを誰も止められぬことによってな」
そうしたことがあってというのだ。
「そして戦になればな」
「大坂は滅びますな」
「最早天下の流れは明らかです」
「幕府、ひいては徳川家のもの」
「最早豊臣家は一大名に過ぎませぬ」
「それでは勝てぬ」
到底というのだ。
「大坂はな、だからな」
「大坂は滅び」
「そして右大臣様もですか」
「滅びられる」
「そうなってしまわれますか」
「戦を止めようと思えば一つしかないが」
それは何かというと。
「茶々様をじゃ」
「密かにですな」
「大坂城に忍の者を忍ばせ」
「そしてそのうえで」
「こっそりと」
「それをすればじゃ」
切支丹のことを決め決して変えないことが明白な茶々をというのだ。
「それでじゃ」
「実際にですな」
「それで、ですな」
「戦にもならず」
「大坂は滅びることもないですな」
「後は実に楽じゃ」
ことの流れ、それはというのだ。
「豊臣家は大坂を出てな」
「他の国に移り」
「後は幕府が大坂に入り」
「そこから西国全体を治める」
「そうもなりますな」
「必ずな、しかしな」
それでもというのだ。
「それが出来るか」
「茶々様を人知れずですな」
「急にいなくなってもらう」
「このことは」
「実は幕府は出来る」
それだけの力があるというのだ。
「伊賀者、その十二神将と服部殿ならな」
「大坂城にこっそりと入り」
「そうしてですな」
「一服盛るなるして」
「そのうえで」
「それで消せる、しかし大御所殿はそうしたことを好まれぬ」
肝心の家康がというのだ、決める彼が。
「あの方も謀を使われるが」
「それでもですな」
「ことそうしたことになりますと」
「どうしても」
「よしとされませぬか」
「正道の方じゃ」
その歩く道はというのだ。
「好き好んでな」
「そうしたことはされよと言われぬ」
「あくまで正道ですか」
「謀にしましても」
「それが効があるとわかっていてもな」
それでもというのだ。
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