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SAO−銀ノ月−
涙雨
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らも、慌ててセブンがここにいる理由を問うものの、すぐさま問いが返されてレインは口をつぐむ。悩み事があったらショウキのところに、などというのは誤解と偏見だというのは伝えたかったが、こうして愚痴を聞いてもらった以上は何も言うことなどなく。

「……いつから?」

「歌が始まったあたり? いい歌といい雰囲気だったから、ちょっと隠れちゃったわ……ショウキくんにはバレちゃってたみたいだけど」

「そ、そっか……」

「……ねぇ、お姉ちゃん」

 そうして笑みを浮かべながら、帽子を脱いで店内に入ってくるセブンの言葉から、レインは次にショウキへと視線を向けたものの。気配などには敏感な彼は、素知らぬ顔のままステージの片付けをしていて。ともかくショウキへと発していた愚痴を聞いてはいないようだと、ひとまずレインが安心していれば、先程まで笑顔を浮かべていたセブンが真剣な顔つきをしていた。

「……お姉ちゃんの夢って、アイドルだったの?」

「……う、うん。ごめんね、ちょっと言いにくくて」

 それでも、歌を歌い終わった時の『歌が好きだからアイドルになりたい』という言葉は聞いていたのだろう、セブンからの問いかけを謝罪しながらも肯定する。目の前にいるのが当の世界的なアイドルであり、言いにくかったとはいえ、ずっと秘密にしていたのはレインの勝手な都合なのだから。

「……まあ、そうよね。なんなら、あたしのお姉ちゃん、って発表すればあっという間だと思うけど?」

「もう。分かってて聞いてるでしょ。自力で七色に追い付いてみせるんだから、待っててよね」

 とはいえセブンにも言い出しにくかった気持ちは分かるらしく、代わりに冗談めかしてアイドルになる一番の道筋を提示してくれるが、レインは何とか誘惑を断ち切った。確かに『七色の姉』というのは、SAO生還者などよりよほどアイドルへの特急券だろうが、流石にそんなことは姉のプライドが受け入れる訳もなく。

「よね。ま、お姉ちゃんの歌は、世界的なアイドルのこのセブンちゃんが保証するから!」

「うん……ありがと」

 その意気やよし、とばかりに肩を叩いて応援してくれるセブンの姿を見れば、もっと早く夢のことを打ち明けてしまってもよかったらしい、と自分が言い出さなかったことを棚にあげて思っていれば。先程まで快活な表情を見せていたセブンが、少しだけ、怯えたような感情を覗かせたのにレインは気づく。

「セブン……?」

「……次は、セブンの番だな」

「……うん。ねぇ、お姉ちゃん。お母さんのこと、だけど」

 ステージをすっかり片付けてしまったショウキの言葉とともに、セブンの怯えたような感情が表に出たように感じられた。ただし怯えて動けないのはではなく、恐怖に立ち向かうかのようにして――セブンは
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