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SAO−銀ノ月−
涙雨
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った仕事が急にキャンセルされちゃったの。他の人にやってもらうからって」

 別にそれぐらいはよくあることで、駆け出しの地下アイドルという仕事からして、レインも幾度となく経験していることだった。しかし今回ばかりは違う話であり、震える唇からレインはその真実を言い放った。

「わたしの代わりの人は七色だって。すごいよね、この前に日本に来たばかりなのに、もう仕事でいっぱいだって言うんだから。妹ながら誇らしいですな!」

 先日の《デジタルドラッグ事件》のために来日していた七色は、そのために来ていたわけでもないだろうに、日本の番組にも顔を見せていた。虹架が受け持つ筈だった回もその一つであり、長期的にも短期的にも、虹架より七色を採用する方が番組にとって利益があるのは当然だ。それはレインも分かっていたが、納得できないことが一つだけあった。

「うん……誇らしくて。七色が世界に認められて、嬉しい筈なのに……」

「…………」

「……嫉妬してる。お姉ちゃんなのに、妹が何でも出来ることに嫉妬してるの……えへへ、お姉ちゃん失格」

 ずっと感じていたことではあった。アイドルとしても世界的にも有名な妹と、地下アイドルの駆け出しである自分の差は。そんな悲観的なレインの告白に、少しだけショウキの素材を片付ける手が止まったが、すぐに平静を取り戻して何も聞かなかったかのように作業を再開する。

「分かってたつもりだったんだけど。七色のことなんて関係なく、ユナの夢を背負ってアイドルになるって」

 それでも妹への嫉妬心というレインとしては許されないことを抱いてしまっていた時、自分が背負っていた筈のユナの夢を、姿が同じように作られていただけとはいえ『ユナ』本人が叶えている瞬間を見てしまえば。レインのこれまでは、全て崩れさるような錯覚に襲われてしまう――有名なアイドルになるという夢は妹が、大勢の前で歌うという浮遊城で潰えた夢は親友が、レインが何かするまでもなく叶えてしまっているのだから。

「……だけど、わたしは必要ないみたい。ねぇ、ショウキくん。わたし、わたしさ……」

 片付け終わった木箱を置いて、レインは依然と背中を向けているショウキへと、助けを求めるように手を伸ばした。何から助けを求めているかはレイン本人も分かっていなかったが、その何かの近くにはいたくないとばかりに、ゆっくりとショウキの方へ歩き出していて。

「わたし……何で……」

 こちらを見ないように配慮してくれているにもかかわらず、レインはショウキの背中へ触れてしまう。それで引き金が引かれたかのように、ずっと言わないようにしていた最低な言葉を口に出してしまう。

「わたしは何で、七色じゃなかったのかな……!」

 ――言ってしまったことによる解放感と自己嫌悪が、いっぺ
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