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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十六話 家門と家族と栄誉
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体を担いで虎城を駆け下りましたわ」匪賊退治の経験者という事だ。遠からず召集されるかもしれない、と直接口に出すことはしない。坂上もわかりきっている事だ。
「そいつは御愁傷様だ、お前が生きて戻れただけ運がいいよ。俺だって退役するときには大尉サマだよ。いつ召集されるかわかったもんじゃない」

「将校殿だったんですか、それなら軍隊に戻ってもそれなりに楽が出来るんじゃないですか?」 
「阿呆、楽ができるならこんな稼業に就くか給金も居心地もこっちがマシさ。俺も娑婆から戻りなくはないね――っておい」軍という現実はその様な私情を押し流すだろう、とりわけ国土の東半分を〈帝国〉軍に押しやられているのならば、どこか投げやりな口調が。

「どうしました?」「馬堂豊久が皇都に戻ると、畜生あの野郎虎城で踏ん張るんじゃなかったのか」
「あ、あの野郎ってアンタ」「同期だよ畜生、この間も黄泉がえった時にお見舞いのお手紙を送ってやったばかりだぞ」――平川は根本的に生真面目でなおかつ相応の野心を持った人間だった、だからこそ軍隊の現実と将家と衆民の現実に向きあい、栄達を求めて父の下に軍隊で築いたコネクションを持って舞い戻ったのだ、といわれても間違ってはいないと感じるだろう。

「何故です?」「俺が知るか!畜生、今の俺は視警院の記者だぞ、専門外だ――」幾つかの考えが脳裏で結びつく。
「だが――そうだ、だがそれだからこそ、知っておくという事は重要極まりない事だ。特に俺達のような稼業では」「なにかありますね?」坂上は身をかがめ、掠れた声で尋ねる、その眼は熱病に浮かされたように危うい光に満ちている。だがそれをとがめることは平川にはできない、彼も同病に罹患しているのだから。
「あぁ上手くやれば兵部省の記者室も出し抜いてやれる。やるか?」「えぇやりましょう」

 ――そういう事になった

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