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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
外道の執行
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光景が異常なのだ。終わることなく、化け物が一人の女を喰らっていく。それを一人の、同世代の人間が指示して行っている。しかも、指示した当人は何の感情も抱いていない。

ふと、ユースティティアが暴れ回る過程で目があった、ような気がした。そこでふと、その姿に。女性的尊厳が捨て去られ、その上でそれとはまったく別のところを犯されていくその姿に、自分が重なった。それでようやく、その事実に思い至る。あそこにいたのは、別に自分でもおかしくなかったのだ、と。それが一輝という人間で、寺西一輝という外道で、鬼道一輝という英雄の姿なのだ、と。

例えば、箱庭に来たとき。別行動をしていなかったのなら私は、彼に殺されていたのではないかと思う。
箱庭に入ってしばらくした後、彼がガルドの誘いを受けていたらそれに乗って私たちの敵になっていたのではないかと思う。
もっと簡単な例として。一輝と湖札の召喚先が逆だったのなら、今とは全く別の結果が現れていただろう。

そうなれば、今あの場で。裸体をさらし、悲鳴を上げて、失禁してもなお止まることなく喰われ続けていたのは、自分だったかもしれない。その考えに至った瞬間、体が震え出した。ただでさえ力の入らない体がさらに崩れ、自覚した段階で五感が情報を受け取りだした。視覚は飛び散る赤を。聴覚は捕食音を。嗅覚は鉄臭さを。味覚は空気中を漂う血の味を。触覚は悲鳴による空気の振動を。ああどうして、どうしてこの状況に、私は直面しているのか・・・・・・!
恐怖から詰問しようとしたところで、視界がふさがれた。

「えっ・・・」
「すいません耀さん、しばらくの間失礼しますね」

湖札の声と手の温度に、少し体の震えが治まった。考えてみれば彼女も一輝と同類だというのに、なぜ安心したのだろうか。年の近い同性の相手、というだけで安心したのだろうか。そんなことを考えていると、ピリッとした感覚が。

「兄さん、一切考慮してないですからね。確かに箱庭で生きていくって考えると必要なことですけど、個人的にはさすがにまだ酷かな、って思いますので」
「え、っと」
「しばらく、五感が落ちます。時間経過で元通りになるので、安心してください」

そういって、手を外される。目を開ければ、言われた通り視界がぼやけていた。他の感覚も平時に比べて落ちている。まだ視界にも入るし聞こえても来るが、それ以外で感じることはなくなった。ちょっと安心してしまう。自己嫌悪は、抱かなかった。

「さて、改めてお話しましょうか。色々と察してはいたようですけど、あれは想定外でしょう?」

その通り。あれだけの残虐性は想定内であったが、あの様子は完全に想定外。どうしてあそこまで無感情に、あそこまでむごいことを行えるのか。

「そう言うわけではっきり言わせていただくと、あれが兄の本性で
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