第二章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「それこそ戦えば」
「一触だな」
「それで終わりです」
「金もなければ後ろ盾もない」
「今高橋が金策で世界を回っています」
桂は高橋是清の話を出した。
「金の方は苦しいが何とか」
「調達できそうか」
「そして後ろ盾ですが」
「英吉利か」
山県も英吉利が露西亜が亜細亜でこれ以上進出しないようにする為に日本と手を結びたがっていることは知っていた。それでだ。
彼は伊藤や井上とは違う考えだ、それでこう言うのだった。
「頼みの綱だな」
「では同盟に賛成ですか」
「向こうから申し出てくれているな」
「はい」
桂は確かな声で頷いて答えた。
「信じられぬ話ですが」
「英吉利にも都合があるのだろう。ではだ」
「この話、乗りますか」
「乗らねばならん」
これが山県の考えだった。
「義和団事件で我が国を信頼する様になったのかもな」
「あの事件で我が国の評判はあがりました」
「うむ。ただ」
「他の国の軍がそもそもですか」
「悪過ぎるのだ」
山県はここでは武士の顔になっていた、彼は元々は足軽の家の倅で松下村塾に入ってから世に出たのだ。
その彼が他の国の軍についてこう言うのだった。
「略奪狼藉等はな」
「あってはならないことですから」
桂も武士の出でありこのことについては山県と同じ考えだった。
「決して」
「うむ。軍人は武士じゃ」
この考えは終戦まで強く残った。とりわけこの時代は軍人は武士だと考えられていたのだ。
「武士がその様なことをするか」
「論外ですな」
「あってはならぬ。特に露西亜の軍は酷かったな」
「北京を荒らし回っていましたな」
その露西亜の名前も出る。
「まことに酷いものでした」
「全くだ。とにかくだ」
「はい、英吉利は義和団事件も見て我が国と手を結ぶことを決意したようです」
「なら乗る」
山県は溺れる中で藁を掴む思いで決断を下した。
「すぐに小村に話をしよう」
「あの者ですか」
「失敗は許されぬ。ここは小村だ」
外務省きての切れ者であり剃刀とさえ言われている彼に仕事をさせるというのだ。
「英吉利との同盟には小村も賛成だな」
「その様です」
「では小村に任せる。何としても同盟を締結しようぞ」
「それでは」
桂は山県の言葉に頷いた。こうして日英同盟締結となった。
伊藤と井上はこれを受けて露西亜との交渉を打ち切った。日本はとりあえずは後ろ盾も手に入れた。だが、だった。
やはり露西亜はあまりにも強い。このことはどうしようもなかった。
明石大佐が工作の為に欧州に向かいさらに露西亜国内、シベリアを横断し連日連夜訓練と作戦会議が
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ