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信じられない話
第三章
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 将兵達は唖然となった、特に士官達は大いに驚き。
 その整列の後でだ、驚いた顔のままで話をした。
「何なんだあいつは」
「負傷した状態で平気で来たぞ」
「しかも胸さえ張っていた」
「流石にあれはないぞ」
「何処まで場を理解しない」
「負傷は恥ではないが」
「目立って仕方がない」
 それで端にいるものだが、というのだ。
「あいつは何なんだ」
「目立ちたいのか?」
「自己顕示欲が強い男だがあれはない」
「目立つにも程がある」
「あれは悪目立ちだ」
「そうした者が参謀か」
「怖いぞ、これは」
 こう言い彼等も危惧を覚えたが辻はこれに終わらず。
 ある時は部隊の中隊長を部隊の将兵が集まっているその前で平手打ちにした、これも誰もが驚いたことだった。
「怒るにしても場所位考えろ」
「士官を叱るなら余計にだ」
 部隊を指揮する彼等のだ。
「それを考えてしろ」
「部下の下士官や兵達もいたんだぞ」
 その中隊長のだ。
「幾ら悪いことをしたからといってそんなところで怒るな」
「平手打ちなぞするな」
「本当に場がわからない奴だ」
「とんでもないことばかりするな」
 辻のその場の読めなさに飽きれるばかりだった、彼は他にも海軍との会合で出された馳走に国民が贅沢は敵だと言っているのにこれは何かと言い上官にくってかかり狼藉を働いた海軍の兵士を手打ちにしそうになった。
 正しいと思ったことは何時でも何処でも主張し作戦もだった。
 自分の身体能力を基準に無茶な作戦ばかり立ててだ、周りを唖然とさせた。それで彼を知る者達が言った。
「だから参謀にしたら駄目だろ」
「あいつは無茶過ぎるんだ」
「無茶な奴を参謀にするな」
「柴田勝家が軍師になれるか」
「なれる筈がないだろう」
 こう言うのだった、そして敗戦になると今度は変装をして潜伏をして難を逃れたが。
 無事に難を逃れて国会議員になった時に彼はまた彼らしさを出したのだった。
「給与なぞ上げなくてもいい!」
「国会議員にも給与は必要なのだよ」
 ある議員が彼を説得にあたった。
「生活もあるのだから」
「それは今のままでいい!」
 今の生活を送れればというのだ。
「そんなものはいらん!」
「では君はあくまでか」
「今回の件には反対である!」
 軍人時代と同じく強い声で言い切った。
「議員の給与を上げることには!」
「反対しているのは君だけだが」
 説得する議員はあえてこのことを言った。
「それでも言うのかね」
「そうだ!」
 返事は同じだった。
「何があろうともな!」
「そうなのか」
「そうだ、説得をしようとしても無駄だ!」
 辻の主張は変わらなかった。
「私は己を曲げない!」
「わかった、では勝手にし給え」
 こうしてこの議員は
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