第一章
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狭い世界
来る日も来る日もだった、彼は勉強ばかりしていた。
氏家学は朝早く起きて通っている高校の早朝からの講習を受けて学校の授業を受けて学校が終わるとすぐに塾だった。そして。
家に帰ると予習復習だ、とかく勉強ばかりだった。
それでだ、家で母の美紀子にこうぼやくことがあった。
「僕ずっとだよね」
「勉強ばかりっていうのね」
「実際にそうだよね」
背は高い、一七七はある。だが勉強ばかりでスポーツは学校の授業で位しかしていないので身体つきは細くひょろりとしている。色も白く髪の毛も整えておらず目は小さい。全体的に弱々しい印象がある。
「高校に入ってから」
「そうした学校でしょ、あそこは」
美紀子は朝早く起きて食べながら言ってきた息子に返した、息子とは正反対にかなりふくらかな感じだ。
「そうでしょ」
「それはね」
「うん、ただね」
「もうそれがなのね」
「何かね」
「嫌になってきたのね」
「嫌っていうか疲れた?」
これが学の言葉だった。
「ちょっとね」
「まあそれはね」
「わかるんだ」
「だってお母さん学生時代は適当だったから」
母は笑って息子に言った。
「お父さんもね」
「お父さんもって」
父はまだ起きていない、職業は漫画家で寝起きは不規則で今日はいささか遅いのだ。基本朝型の漫画家であるが。
「そうだったんだ」
「大学は行ったけれどね」
「そこそこの大学で」
「勉強はしてたけれど」
「僕程じゃなくて」
「小学校から大学まで遊んでて今もね」
母親になって久しいがというのだ、朝から山盛りの御飯を食べつつ言った。
「ゲームばかりしてるし」
「スマホの」
「だからね」
それでというのだ。
「あんたがそう言うのもね」
「わかるんだ」
「あんた見てると本当に」
実際にというのだ。
「脇目も振らずに勉強ばかりだから」
「今は特にね」
「お医者さんになりたいからね」
「うん、志望は八条大学医学部だよ」
「あそこ全国でもトップクラスだからね」
「それでね」
こう言うのだった。
「高校の早期講習も塾もだよ」
「全部真面目に受けて」
「予習復習もしてるよ」
それこそ夜遅くまでだ、睡眠と食事と移動時間以外は常に机に向かっていると言っていい位である。
「まさにね」
「そうよね」
「志望先に受ける為に当然と思っているから」
「勉強してるのよね」
「そう、けれどね」
「疲れてるのね」
「何かね、最近。あと少しだけれど」
志望先の八条大学医学部の受験の日までだ、彼は高校三年生で十月になったところである。推薦で受けるつもりだ。
「それでもね」
「疲れているの」
「最近教科書とノートとペンとね」
「机ね」
「そ
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