七 宣告
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「……仕方ねぇ…。仲良くなんて柄じゃねぇけど、九尾のヤローに負けるのは癪だからな…。俺様が力を貸してやるんだ!感謝しやがれ!!」
何がなんだかわからず、ぽかんと口を開けている我愛羅をよそに、ナルトはほくそ笑む。
『木ノ葉崩し』前における、波風ナルへ力を貸して欲しいと頼んだ九尾と同様の手法だったが、上手くいったようだ。
一尾も九尾もお互いに気の無いふりをしていながら対抗意識を燃やしている。
よって、ナルトはわざと守鶴の劣等感を刺激した。
九尾の自尊心を傷つけ、ナルに力を貸すように仕向けたのと同じ原理だ。
卑怯なやり方だとは理解しているが、こういった荒療治でもしないといつまで経っても状況は変わらない。
今まで『守鶴』と名前を呼んでいたのに、急に一尾と呼び方を変えたのも、ナルトの計算の内だ。
再び封印した守鶴の茶釜に、ナルトは背中を向ける。
あれだけ口喧嘩していたのに、気遣わしげに釜の中の守鶴を見やる我愛羅を横目で見て、案外歩み寄るのは早いかもしれないな、とナルトは満足げに頷いた。
尾獣と人柱力が仲良くなれるのなら、ナルトは己自身がどれだけ憎まれても恨まれても構わない。
たとえ敵と見なされても、そう思われるだけの非道な行為をしている自覚が彼にはあった。
踵を返したナルトに手を引かれ、我愛羅が困惑顔で茶釜から離れる。
猶も喚き散らす守鶴を、ナルトは肩越しに振り返った。微笑。
「相変わらずお前は、九喇嘛への対抗意識が強いね。守鶴」
その瞬間、守鶴は喚くのをやめた。口を噤む。
彼の姿が、遠い昔慕っていた人物と重なった。大きく目を見開く。
「…じじい……?」
その呼び掛けに、ナルトは応えなかった。
ひんやりとした冷たさを背中に感じて、我愛羅は眼を開けた。
ゆっくり瞼を押し上げる。
「こ、ここは……」
砂隠れの里で『暁』の一人であるデイダラと闘って力尽きた後からの記憶が無い。
ぐらぐらする脳に加えて、眩暈がする。
ぼやける視界の隅で、白いフードを被った誰かが、我愛羅の顔を静かに見据えていた。
「起きて早々、申し訳ないが」
淡々とした冷たく澄んだ声が、我愛羅のいる洞窟の奥に染み渡る。
ぼんやりと霞む視界の中、我愛羅は目覚めた直後に、とんでもない宣告をされた。
フードの陰に隠れたその双眸の青には、動揺も戸惑いの色も何一つ無い。
ただ淡々と、ナルトは我愛羅へ静かに囁いた。
「死んでくれないか」
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