第2章 四国から来た方言少女
第9話 受験と訓練を秤にかけて
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見掛けに不相応なほどに艶やかさを感じさせる、桜色の薄い唇。口から覗いている、愛嬌のある八重歯。
肩まで流れるように掛かった黒髪のセミロングに、年の割にはやや幼い顔立ち。
フォローのしようがないぺったんこではあるが、その一方で脚線美には定評がある。それにぺったんこといっても、それはいわばスレンダーとも呼べる肢体であり、一部の男子諸兄からは好評であるらしい。
そして俺から見ても小柄であり、こっちから頭を撫でるのには丁度いい身長差。
俺達二人の前に現れたクラスメートの容貌を簡単に説明するなら、まぁこんな感じだろう。ちなみに、彼女は四国出身だからか地元の方言が特徴的だ。
矢村は俺と救芽井を交互に見遣ると、キッと俺を睨みつけてきた。ひぃ、こえぇ!
「今が大事な時やのに、ようこんなところで女と油売っとるのぉ! これで落ちとったら承知せんで!」
「いや、ちょっと待ってくれ矢村! これにはいろいろと事情が……!」
「なに? 変態君の知り合い? 用事なら早く済ませてね。この後すぐに特訓だから!」
「……あのね、救芽井さん。俺って一応、受験生なんですけど」
俺達の行動をデートと誤解している矢村が、なにやらプンスカしている。その一方で、救芽井は人の都合を華麗にスルーして、勝手に俺のスケジュールを侵略しようとしていた。
二人揃って、俺を何だと思ってやがる!
「――さっきから気になっとったんやけど、『変態君』ってどういうことや?」
「う……!」
矢村は目を細めて、ジィーッと俺を睨みつづけている。しかし、難しい質問をしてきたもんだ。
詳しくいきさつを話そうものなら、どうしても救芽井の素性に発展してしまう。俺一人ぐらいならまだしも、矢村をこのゴタゴタに引きずり込むのは忍びない。
上手くはぐらかすには、俺の弁明ぐらいじゃ足りないだろう。ここは救芽井にも協力してもらおうと視線を送――
「この人が私の着替えを覗いてたのよ。だから変態君」
――る前に、しれっと何をぬかしとんじゃああああああッ!
「な、なんやって!? 一煉寺、あんたいつの間にそんなッ……!」
誤解を解こうと口を開く間もなく、矢村は信じられないものを見るような目を向けて来る。お前もあっさりと信じるなあああああッ!
遺憾だ! 誠に遺憾でござる! 俺は抗議しようと大口を開くが……。
「仕方ないでしょ、事実なんだから! それに、この娘まで巻き込む気!?」
と、そっと耳打ちされてしまい、しゅんと引っ込んでしまう。くう、そんな言い方されたら俺が悪者になってしまうではないか!
「とにかく、私達は忙しいの。これで失礼するわね」
「だから、矢村が言うように俺だって受験勉強が……!」
「あなたの頭脳じゃ、どの道無理よ。それ
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