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とある星の力を使いし者
第162話
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、って言ってたけど他にもいるの?」

「ああ、お前も会った事ある筈だ。」

一三階でエレベータは止まる。
すぐそこのドアをインターホンを押さずに扉を開ける。
いきなり扉を開けた事に制理は驚くが、それを気にせず中に入る。
廊下を抜けた先のリビングにある、ダイニングテーブルの椅子に一人の女性が座っていた。
腕を枕にして突っ伏している。
その後ろ姿に制理は見覚えがあった。
芳川桔梗だ。
桔梗は扉がインターホンなしで、開いて事に気がついたのかゆっくりと顔を上げる。

「あら、恭介。
 それとそちらは吹寄さんね。」

入ってきたのが麻生と知ると、桔梗は力のない笑みを浮かべる。
制理の事もあの事件と病院で名前と顔を覚えていたらしい。
声には力が無く、目元にもクマができている。
それを確認して麻生はキッチンの方に足を向ける。
指でキッチンを触ると少しだけ埃が溜まっていた。

「ご飯食べてないだろ。」

再びリビングに戻りながら、麻生は言う。

「食欲が無くてね。」

「あれが原因か。」

あれ、とはティンダロスの猟犬の事だ。
その事を桔梗は分かったのか、ゆっくりと頷く。
制理も気がついた。
自分以外にもあの悪夢にうなされている人がいたんだと。

「そうか。
 桔梗、俺は今日からここに住むよ。
 後、制理も。」

「・・・・・それはいいけど。
 いきなりどうしたの?」

「お前達はあの化け物を見て、精神的なダメージを負っている。」

桔梗は制理に視線を向ける。
視線の意味に気がついた制理はコクリ、と頷く。

「俺が住み込みでメンタルケアをするつもりだ。
 今から寮に戻って必要な物を取ってくる。」

「ちょっと待ちなさいよ!
 私はまだ住むとは言ってないわよ!」

勝手に麻生が話を進める中、制理は少し強い口調で言う。
正直な所、麻生と一緒に住めばあの悪夢を見なくて済むだろう。
それは今の制理からしてとても魅力的なのだが、何も言わずに一緒に住むのは気持ちが許さなかった。
好きな人と一緒に住めるのは嬉しい。
でも、素直になれないでいた。

「出来る事なら一緒に住んでもらいたいのだが。
 部屋も余っている。」

「そういう問題じゃなくて!」

「それにお前のあんな姿を俺は見たくない。」

「うっ・・・・」

少し暗い顔をしながら麻生は言う。
自分を責めている。
制理は麻生の顔を見てそう思った。
素直になれない気持ちを振り払うように言う。

「わ、分かったわよ。
 私もあんなのはもう見たくないし。」

「ありがとう。」

「べ、別に礼を言われる事じゃないわよ。」

顔を少しだけ赤くしながら言うが、恥ずかしくなったのかそっぽを向
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