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真剣で納豆な松永兄妹
新章プロローグ
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悔しろ」

 拳が交差する。それは、川神院の師範代クラスでも見て取れないハイスピード。
 
「素晴らしいヨ。松永久秀」

 ルー師範代は、心から賞賛を送る。
 そして、違和感も感じ始めていた。
 それは、この場に居る壁を超えた人間が感じ始めていた違和感。
 川神百代の攻撃が読まれている。松永久秀の攻撃が当たり始めている。
 
「ッッツ、瞬間回復――。何っ? 瞬間回復が発動しないだと!」
「瞬間回復に頼りすぎだ。川神百代。俺はアレほど瞬間回復に頼るなと言ったぞ」

 ヒュームヘルシングが笑をこぼして言った。
 忠告であるが、それはもう遅い。
 が、瞬間回復が働かなくとも川神百代は強い。
 ここに来てやっとギアを上げ始める。

「おせーよ」

 畳み掛ける攻撃。捌き切れない攻撃。
 被弾は多い。ダメージもデカイ。
 しかし、川神百代は諦めない。
 それでも、川神百代は強い。

「どうかな。ハハッ。楽しいな!」

 復活する。瞬間回復は封じられた。それがどうした。
 今よりもっと強くなれば良い。
 成長する化物。
 
「ッ。いてーな、このっ!」

 成長する怪物。
 気付けば、両者とも足を止めて打ち合う形になっていた。
 戦女神と戦神の戦いが目の前に展開されていた。
 雄々しく、美しい。
 神々しくもあり、禍々しくもある。しかし、それでも心を震わせる。
 武を極めようとする川神院修行僧の多くは、自然と涙を流していた。
 感涙。腹の底から声を上げて叫びたい程の感動。
 
「嗚呼、キレイだ……」

 誰かが言った。誰もが思った。
 美しい舞。美しい演武。
 断言出来る。これ以上の戦いを見ることはこの先一生無い。
 
「姉さんが……」
「兄ちゃんが……」

 直江大和、松永燕が同時に言った。

「泣いてる」

 それは、涙ではなく、汗だろう。
 それは、涙ではなく、血飛沫だろう。
 それでも、涙に見えたのは、観測者であるが故。
 体力が無くなれば、気力で。
 川神百代のダメージは大きい。松永久秀のダメージは大きい。
 互いのダメージは、限界を超えている。
 
「精神力が肉体を超え始めたカ……」

 ルー師範代が感涙の涙を流しながら言った。
 2人の蓄積されたダメージを考えるなら止めるべきだろう。
 しかし、神聖な決闘を止めるに叶わず。
 川神鉄心もまた、気付いているが、止められない。
 そう、誰もが見入っているし、止めようとしない。
 互いが互いの限界を超えて戦っている。
 そして、互いが互いの限界を超えて成長している。
 止められるはずがない。
 滅多に見られない、言葉にしすればミックスアップ。
 潜在している能力を引きだし
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