Side Story
インナモラーティは筋書きをなぞるのか 1
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るお前じゃ、二人には何もできん。倫理に則った怒りをぶつけることも、寄り添って心を安らげることも」
ぐっ、と言葉を詰まらせたアーレストさんからマリアさんへ視線を移し、もう一度アーレストさんを見た師範が、今度は私を見て小さく笑う。
「コイツ、子供の頃に性的な意味で男から暴行されかけた経験があってな」
「「「…………は?」」」
マリアさんと私、マリアさんの首元で黙って座ってたリースさんの呆気にとられた声が重なった。
「その時は自前の力で撃退したんだが、それ以来暴行された経験を持つ女にどう接して良いのか解らなくなってるんだ。ヘタな言動で恐怖を思い出させ傷付けてはいないか、無神経な態度を見せてるんじゃないか、ってな」
返す言葉が見つからないのか、アーレストさんが黙って師範の手を離す。
「さっきまで固まっていたのは、クロスツェルさんのことや、アリアの真実だけではなく、マリアさんの過去を気にして……?」
「よく間違われますが、私は女性ではありません。私が男性に襲われかけた時の恐怖と、女性が男性に襲われた時の恐怖は、似て非なるものでしょう。襲われかけたと襲われたの違いも大きい。だから、私には彼女達の気持ちが解らないし、どうするべきかも解らないのです。情けない限りですが……」
意外だ。
アーレストさんなら、どんな相手にも躊躇なく手を差し出すと思ってた。
「そうだな。迷いや戸惑いってヤツは、どんなに隠そうとしても、周囲にはしっかり伝播するモンだ。中途半端な介入は、言葉通りの『大迷惑』。お前自身が確固たる指針を立てられないなら、お前と二人は会うべきじゃない。俺の護衛はフィレスが居れば十分だし、お前はここで大人しく書類と感情の整理でもしてろ。俺とフィレスがここに居るって偽装工作も必要だろ?」
「……っ、だからって!」
「アーレストさん」
ベッドを降りて近付くマリアさんの声に。
アーレストさんの肩が、ビクッと跳ね上がった。
そろりとゆっくり振り返る様子は……
なるほど。怯えてるようにも見える。
どう接したら良いのか、本当に解らないんだな。
そんなアーレストさんを見上げて、マリアさんが柔らかく微笑む。
「大丈夫。フィレス様が傍に居れば、ソレスタさんの安全は保障されるわ。彼女を信じて二人の帰りを待ちましょう。その間に貴方と話してみたいの。付き合ってくれる?」
「話、ですか」
「ええ。何故かしらね? 貴方をじいっと見ていると、とても大切な人達を思い出すのよ。雰囲気がどことなく似てるから、かしら」
精一杯伸ばしたマリアさんの両腕に、腰を曲げた姿勢で両手をおずおずと預けるアーレストさん。
傍目に
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