巻ノ百十七 茶々の失政その四
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「悪しき者ではない、ならばな」
「認めてもですか」
「よい」
こう見ているからだというのだ、茶々自身が。
「だからじゃ」
「それでは」
「切支丹は認める」
この考えを変えなかった。
「わかったな」
「左様ですか」
「何故豊臣が徳川に従わなくてはならぬ」
何故そうするのかをだ、茶々は強く言った。茶々にとって何といってもこのことが最も強いことだった。
「その謂れはないわ」
「だからですか」
「そうじゃ、認める」
あくまでこう言うばかりだった。
「これ以上この話はせぬ」
「しかし」
「片桐殿」
もう一人の執権と言ってもいい大野が片桐を咎める目で見て来た、出した言葉もそうしたいろだった。
「茶々様のお考えですぞ」
「だからですか」
「これ以上は如何かと」
「左様、茶々様でありますぞ」
今度は大野の母であり茶々の乳母であった大蔵局が言ってきた、茶々の周りの女御衆の筆頭である白髪であるがまだ整った顔立ちの女だ。
「これ以上はなりませぬぞ」
「左様、片桐殿はどうも」
「お口が過ぎまする」
大野の二人の弟達も言ってきた、まだ若い重臣の一人である木村重成も咎める目で見て来ている。
「ここはです」
「慎まれるべきかと」
こう言う、すると彼も彼と同じ思いの者達もだ。
これ以上は言えなかった、これで切支丹のことは決まったが。
その話を駿府で聞いてだ、崇伝は呆れ果てた顔で彼の弟子達に言った。
「これは駄目じゃ」
「豊臣家は」
「茶々様は」
「まさかとも有り得るやもとも流石にとも思っておったが」
しかしというのだ。
「やってしまわれたな」
「切支丹をですな」
「認められた」
「そうされましたな」
「あれだけはじゃ」
まさにというのだ。
「幕府としてもな」
「看過出来ませぬ」
「幾ら何でも」
「他のことは大目に見られても」
「このことは」
「どの家がしてもじゃ」
勿論豊臣家でもだ。
「駄目だからな」
「はい、それでは」
「この度のことは」
「戦ですか」
「それを覚悟しますか」
「うむ」
こう弟子達に言った。
「これはな」
「しかし戦は」
「大御所様にしましても」
「望むものではありませぬ」
「それなくです」
「ことを進めたいとのお考えですが」
「わかっておる、しかしな」
家康がそう思っていてもというのだ。
「こればかりはじゃ」
「見過ごせぬ」
「そうしたことですな」
「どうしても」
「だからですな」
「そうじゃ」
それでというのだ。
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