第3話 こんなボーイ・ミーツ・ガールは嫌だ
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な風貌に、何事かと正座から立ち上がろうとしていた龍太は腰を抜かしてひっくり返ってしまった。
「ムンクの叫び」を思わせるような凄まじい形相――を象った鉄仮面に、黒い西洋甲冑で全身を固めたような格好の、人ならざる人。
すなわち、例の古我知剣一が擁する自律機動兵器「解放の先導者」が現れたのだ。
「『技術の解放を望む者達』……! いくら夜中だからって……こんな住宅地まで茶々を入れに来るなんて、いい度胸じゃないっ!」
「待つんじゃ樋稟! 今、存在が世間に知れたら困るのは向こうも同じじゃ! どうせ奴らは襲っては来れん!」
「このまま放ってなんかおけない! 私達の都合で誰かを巻き込まないうちに、早く決着を付けないとっ!」
そそくさと窓の向こうから立ち去っていく「解放の先導者」。樋稟はその機械人形を追って家を飛び出そうとするが、稟吾郎丸は必死に制止する。
というのも、あの逃げた機械人形を追っていけば「呪詛の伝導者」と遭遇する事態は、避けられないはずだからだ。現時点において、救芽井家は兵器としての戦闘能力を持った「呪詛の伝導者」に対抗する術を持っていない。
生身の人間に比べてパワーはあるものの、運動性で着鎧甲冑を使う人間に劣る「解放の先導者」はともかく、戦闘用に特化した「呪詛の伝導者」に接触すれば、たちまち「救済の先駆者」はスクラップにされてしまうだろう。
しかし、それ以上に彼女は自分達が造り出したテクノロジーを巡る抗争に、他人を巻き込む事態を避けたいという気持ちが強かったのだ。
樋稟は稟吾郎丸の小さな体を振り払い、ショートボブの茶髪を揺らしながら、自宅を飛び出していく。
そして、感覚的に関しても物理的に関しても置いてけぼりを喰らってしまった龍太は――
「た、頼む龍太君! 樋稟を……あの娘を助けてやってくれい!」
「あー……やっぱそういう展開?」
――わけがわからないまま、樋稟を追うように言われてしまっていた。
「……ああもう、なんなんだよ今夜は! こうなったらあの娘を助けて、変態のレッテルだけでも剥がしてやるっ!」
他所の難しい話は、知識を詰め込もうと必死な受験生にはよくわからない。
それでも、変態扱いされたまま別れることは、仲が悪いまま終わらせることを嫌う彼の性分に反することだった。
龍太は、カーテンが開けられた窓から樋稟が走って行った道を確認すると、愛用の赤いダウンジャケットと黒のフィンガーレスグローブを着用する。
「受験生に面倒事をあてがわないで欲しいね、まったくっ!」
そして両手で頬をパン! と叩いて気合いを入れ、一人の少女を追って救芽井家を出発していく。
――彼の冬休みの稀少な一時が今、始まろうとしていた。
「『
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