暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第2話 スーパーヒロイン「ヒルフェマン」
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
松霧町(まつぎりちょう)商店街で火災発生! 『救済の先駆者(ヒルフェマン)』出動じゃ!」

 湯煙に包まれた空間の中で、老人の叫び声が響き渡る。
 しかし、そこに声の主はいない。要するに、何らかの通信機越しに発せられた声なのだ。

 その発信源を取り付けたブレスレットを右腕に嵌めた、一人の美少女。ショートボブの茶髪と、薄く透き通るような色を湛える碧眼は、彼女の美貌をより一層引き出していた。
 彼女は老人の声を聞き取ると、凜とした瞳を鋭く細め、浸かっていた湯舟から身を乗り出す。一糸纏わぬその姿は、さながら人間に生まれ変わったばかりの天女のようだ。なめらかな曲線を描くその身体は、ある種の神秘ささえ感じさせる。

 すらりと伸びた細い脚、くびれた腰。それに相反し、ふくよかに揺れる双丘。異性を惹きつけるには、あまりにも過剰なフェロモンさえ放たれているのだ。
 だが、その目付きにだけは「天女」と呼べるような優雅な印象はない。あるのは、「いざ死地に赴かん」といわんばかりの決意の色だ。

「わかったわ、おじいちゃん……着鎧甲冑(ちゃくがいかっちゅう)ッ!」

 例の老人と機械を通じて言葉を交わすと、彼女は呪文を唱えるかのようにブレスレットに叫び、それを装着した右腕を勢いよく突き上げる。さながら、世に言う「変身ポーズ」のように。

 刹那、彼女のみずみずしい肢体は機械の腕輪から飛び出す光に絡み付かれてしまう。その輝きは少女の全身を覆うように広がって行き、やがて光はある形状に固形化していった。

 彼女の美しい身体のラインを完璧なまでに維持した、緑と基調としたボディスーツ……そして、黒いグローブとブーツ。さらに、きめ細かく整った目鼻立ちが特徴の麗しい顔を包み込む、シールド付きのジェットタイプヘルメットを思わせる形状のマスク。その口元を覆う部分には、唇をあしらったデザインが施されている。さらに蒼いバイザーからは、彼女の視界が広がっている。

 まるで昔の特撮ヒーローのような、シンプルなそのスーツを一瞬にして身につけた彼女は風呂場の窓を開けると、一切の迷いを感じさせない動きでそこから飛び出していった。

 ◇

 夜の町を暗黒にさせまいと光る、月光や電灯の輝き。それらの他にもう一つ、今宵の景色を明るくさせる光があった。
 商店街の一角にある、小さな中華料理店。そこで発生した火事の勢いが、この日の夜を騒然たる状態に叩き込んでいたのだ。

「あそこね……! おじいちゃん、被害に遭った人は!?」
『今のところは怪我人の類はいないみたいじゃの。――じゃが、火事が起きた店の上の階に逃げ遅れた子供がおるぞ!』
「わかったわ!」

 スーツを纏ってからもしっかり装着されているブレスレットを通して、老人が状況を説明する。彼の指示
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ