第2話 スーパーヒロイン「ヒルフェマン」
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に従って動いている少女は、人間とは思えないような速度でアスファルトを駆け抜けていく。
既に現場では消防隊が駆け付けていたが、火の勢いが思いの外激しく、老人の言っていた「逃げ遅れた子供」がいる階まで辿り着けない事態に陥っていた。梯子車で十分届く距離ではあるのだが、なにぶん煙や炎が強烈で、突入はおろか、近寄ることさえ難しい。放水は既に開始しているのだが、火災が止まる気配は見られなかった。
そこへ颯爽と駆け付けたのが、例の少女――が扮する、謎のヒロインだ。
彼女は自分の登場に驚く人々を尻目に、猛烈な火災に包まれた中華料理店に真っ向から突撃した。
真っ赤な炎に蹂躙された建物を突き進み、灼熱をものともしない。今の彼女は、まさしく勇敢なヒロインそのものといった出で立ちであった。
「消防隊が鎮火を始めてるのに、勢いが全然止まらない……きっと、食用の油に引火してるのね」
冷静に事態を分析しつつ、身を焦がさんと暴れ回る火炎をかい潜り、彼女は階段を駆け上がっていく。
例え瓦礫が落ちてきてもパンチ一発で迎撃し、火に包まれても手刀一つで振り払い、足場が崩れても人間離れしたジャンプで危機を脱する。
そんな彼女の快進撃を阻む障害は、ありえなかったらしい。
やがて到達した目的の階層で、例の子供を見つけた時も……彼女は無傷であるばかりか、息一つ切らしていなかった。
そして少女は無事に子供を救出し、固唾を飲んで見守っていた人々の拍手喝采を背に、夜の闇へと姿をくらました。
全身を謎に包めた、無敵のヒロイン――その存在は、この活躍を通して人々の間に「より」浸透していくことになる。
◇
そんな彼女が満足げに帰宅した頃には、既に時刻は夜の十時を回っていた。クリスマスが近いこの季節に、この時間帯はかなり冷え込む。
自宅の一軒家を前にした少女は、周囲に目撃者がいないことを確認するべく、辺りを見渡す。そして誰もいないことを確かめると、素早く家に入れるようにと開けておいた窓から、速やかに帰宅する。
窓で出入りするのはよろしくないことだと知っていたが、それでも正体がばれる可能性を最小限に抑える努力を怠るわけにはいかない――というのが彼女の言い分だ。
馬鹿正直に玄関から行き来していたのでは、いつ通行人に見つかって自分の素性が露呈してもおかしくない。それを思えば、多少はしたないことではあっても、窓からコソコソ出入りした方がまだマシ、ということなのだ。
そういう事情から、彼女は窓から忍び込む格好で二階の自室に入っていく。そして人目を憚るように窓とカーテンを閉め、慌ただしく辺りを見回す。
この場に誰もいないのは当たり前で、同居している彼女の祖父――すなわちさっきまで彼女と話していた老人も、今は一階のリ
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