第二部 英雄たちの策動
つかの間の静穏
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ったというならそれをどうするのか。そして何より、このやり口は……
「どうかしたか?」
「……なんでもない」
もしかしたらという疑念はある。でも今は、それを言葉にして曹操の心を乱すわけにはいかない。
だから、今は私の胸の中にこの疑念は仕舞っておこう。願わくば、杞憂であればいいのだけれど……
そんなことを考えながら、曹操の手元に広げられた書類からそっと視線を外す。
ちょうどそれを見計らったかのようなタイミングで、部屋のドアがノックされる。
「曹操、ここにいるのかい?」
「何だ、ジーク」
曹操が返事をすると、かちゃりとドアを開けてジークが入ってくる。
「ゲオルクが探していたよ。あれの捜索をしたいんだってさ」
「ああ、そうか。ならばすぐに行くと言っておいてくれ」
最近、曹操とゲオルクは何かを一生懸命探しているらしい。それがなんなのか、聞こうとは思わない。きっと大切なものなのだろうし、だったら一緒に過ごす時間が減ったなんて言うのは、わがままでしかないから。
視界の端で、曹操が立ち上がるのが見える。
「あ……」
行動は完全に無意識だった。気がついた時には、立ち上がってドアのほうに向かっていた曹操の袖を引っ張ってしまっていて。
突然袖を引っ張られた曹操はと言えば、怪訝そうな顔でこちらを見ていた。
「……どうした?」
かけられた声がわずかに心配そうで。
いまだに、そんな感情を向けられることに慣れていない私の感情が、少し波立つ。
「……ごめん、なんでもない」
掴んでいた袖を離して、首を横に振る。私のことは気にしないでいいから、曹操のやりたいことをやってほしい。
そう思っているはずなのに、なんで今―――離れたくないって、思っちゃったんだろう。
ままならない自分の感情を抑え込んで、曹操に大丈夫だよと頷いて見せる。
出ていく曹操を見て、自分の行動を思案する。さて、じゃあ私はどうしようか…
◆◇◆◇
「くそっ、あの女に魔導具を持たせるのは百歩譲って良いとしてもその日の内に壊してくるとは何を考えているのだ!素材も有限だというのに……」
「すまん、遅れた。そして何が不満だ、ゲオルク」
「遅かったな、曹操。大方、文姫のところに行っていたんだろう。不満と言えば―――この際だから言わせてもらうが、曹操。助け出したことで文姫に愛着が湧くのは分かる。だが構いすぎれば目的を見失うぞ」
「構うな。責任は俺が取ればいいだけだろう」
「曹操!……少し、まずいかもしれないな」
◆◇◆◇
部屋に留まっていると絶対に気は休まらないので、ふらふらと外に出る。
別に部屋が居心地悪いというわけではない。ただ、英雄派の中には私が気に入らなくて仕方がない人が何人
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