第二部 英雄たちの策動
遭遇戦
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から、基本的に無力化に止めている。
首にかけた輪をなでる。曹操がゲオルクに作らせて、私に持たせた魔法具の一種で『隠遁』の術式を発動させることができる。簡易的なものだから過信は禁物だけど、ここまではしっかり効力を発揮してくれた。おかげで、固まっていたシトリー眷属を背後から気が付かれずに奇襲し、効率的に無力化することができた。完全に気配を消して背後から奇襲で落とせるのならば、だいぶ労力は違う。
「……とりあえず、急がないと」
だいぶ工場にも近づいてきたので、足を速める。
工場のほうからは何か大きな力のぶつかり合いと複数の気配を感じる。もしかしたら、グレモリー眷属はそちらの方に出張っているのかもしれない……
一瞬だけ気が散じる。その瞬間を狙いすましたかのように、びゅっと風切り音。
咄嗟に避けたけれど―――あ、まずい。魔法具に相手の攻撃が当たり、パキンッと乾いた音がする。
「……やはり、ここで張っていて正解でしたね。姿を隠しているようでしたので、魔力を使って探していたのですが」
一回転して着地した私の聴覚に冷静な声が滑り込む。見れば、長い黒髪に眼鏡をかけた女性がこちらに歩み寄ってきていた。その手には長刀がある。その前には、先ほど私をラインで投げ飛ばした元士郎と呼ばれていた男の子の姿も見える。拳を振り切った態勢をしているあたり、攻撃を仕掛けてきたのはこっちのほうだろうか。
―――まあ、どっちでもいいや。二対一の状況で、正念場に変わりはない。
「禍の団、英雄派の構成員ですね?ここから先、通すわけにはいきません」
「俺の仲間をやってくれたんだ。ただで済むと思うなよ…!」
鋭い殺気と怒気が向けられる。
一瞬のち、戦端は開かれた。
先手を取ったのは相手のほうだった。男の子の右腕が黒い蛇のようなものに覆われる。
これで彼の正体は確定―――曹操から聞いていた五代龍王の一体、『黒邪の龍王』ヴリトラの力を使うというソーナ・シトリー眷属の『兵士』、匙元士郎だろう。―――無力化しておくに、越したことはない。放っておいて合流したら、絶対に追いかけてくるだろうし。
次々と伸びてくるラインを、ジグザグに走って躱す。これだけなら大したことはないけど…何を企んでいるかわからない以上、用心しないと。
「ハッ!」
振り下ろされてくる長刀が視界をよぎる。それと連動するように、視界の隅に放たれたラインが見えた。長刀を受け止めるか避けようとして足を止めればラインにつかまり、ラインを避けようとすれば長刀の餌食になる可能性が高い。
でも、残念だけど。
「読めてる」
長刀はリーチこそ長いけれど、それ故に懐に飛び込まれればなんとでもなる。
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