第二部 英雄たちの策動
四織の受難
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…おそらく、着飾らせたのはジャンヌだろう。全く、余計なことを。
だが、さすがに何も言わないのは失礼なのも事実だろう。
「……………ん、ああ。似合っていると思うぞ、文姫?」
「…そう、かな?」
そう言ってやれば少しだけ笑みを浮かべる文姫。いつも感情を表に出すことがなく、無機質な印象を与える彼女がこういう表情をするのは非常に珍しい。
―――少し、血が動いた気がした。
「調査に行くには、慣れない服装は動きにくいと思うが」
「馬鹿ね、いつもの格好のあんたら二人だと目立つわよ?それこそ、調査にならないでしょうが」
文姫に聞いたというのに、なぜかジャンヌが答える。何やらニヤニヤしているのは気に食わない。が、今回の目的は秘密裏に駒王町を見て回ることなので『目立ってはならない』という理屈は分かる。
だが、それと文姫を着飾らせるのは違うだろう。何より、着飾った文姫は間違いなく男の視線を集めるだろう。それは少々、面白くない。
「……まあいい。行くぞ、文姫」
「ん」
「あ、曹操。ちょっと待ちなさいよ」
既に用意してある転移魔方陣のほうに歩こうとすると、なぜかまたも邪魔をする声が。
いい加減なんだと目線で問いかけると、ジャンヌは声量を落として話しかけてくる。文姫には聞かせられない話なのか。
「あんた、ちょっとあの子に服買ってあげなさいよ」
「……なぜ俺が」
「あら?あの子が可愛くなればあなただって嬉しいでしょう?今だってほら、見とれてたみたいだし?」
「……」
もはや反論する気も起こらなかったので無視して歩く。
文姫のほうは少し戸惑っていたようだが、結局はいつも通り後ろをついてくる気配が感じられた。
―――さて、行くとするか。
◆◇◆◇
転移魔方陣を通って少し離れたところに出て、交通機関を乗り継いで駒王町とやらに到着した。
今日の私の仕事は、曹操の護衛だ。いらないような気もするけど、お仕事ではあるから。
曹操のすぐ後ろを歩く。いつもの服装と違うからか、少し体がむずむずするような気がする。
けど、せっかくジャンヌが見立ててくれたものだし、曹操も似合ってるとは言ってくれたからいいかな。
曹操はこういうことで嘘は言わない。それは分かっているし、傍においてくれるだけで満足だから何か言う気もない。
いつもならそうなんだけど……うん、今日の曹操には少し、不満があるかな。
「文姫」
あ、呼ばれている。少し距離が開いてしまったみたい。考え事をしているせいかな。周りの警戒もしてるけど。
慌てて足を速めて曹操に追いつく。と、突如指先が何かに包まれる。
「……曹操?」
「放っておくと迷子になってしまいそうだからな、君は」
私の手を掴んですたすたと歩きは
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