第一部 出会い
転機
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い感覚が私の中に広がっていくけれど、別にそれには何とも思わない。ただ少しだけ――――くすぐったいような、きゅんとするような…
表情や仕草には一切出さずそんなことを思っているうちに、曹操が口を離す。
「すぐに手当てをするんだ。料理のほうは俺が作っておく」
「…ん、分かった」
ああいう口調で言うときの曹操は、残念ながら反論をしても無駄だ。
それが分かっているからこそ、私も素直に諦めて手当をすることにする。
ガサゴソと荷物の中を探っていると、ちょうどよさそうな布が出て来たので血を拭う。傷口が見えたところで、止血をしたまたま持っていた絆創膏を貼る。これで傷口の処置は完了だ。
トントンとリズミカルな包丁の音を聞いてしばし考え事をしていると、いい匂いが漂ってくる……結局、どうやって調理したんだろう?
曹操が鍋を持って入ってくる。あ、結局鍋にしたんだ。
「すまない、待たせたな」
「ううん、大丈夫……結局、鍋でよかったの?」
野菜も入って美味しそうだ。それにやっぱり、外は寒いから温かい食べ物がありがたい。
器を渡されて、箸をとる……だけど。
先ほどより腕を動かすのがつらい。どうやら、軽く見ていた負傷は結構深刻だったようだ。
「…どうした?」
そんな自分の動きに気が付いたのか、曹操が怪訝な顔をして問いかけてくる。
こういう時は彼の観察力がちょっとだけ恨めしい。見抜かなくてもいい不調まで見抜いてくるから…隠すのはそれなりに慣れてるのに。
「……ちょっとだけ、動かしにくいだけだから、気にしないで」
見抜かれているなら仕方がない、素直に事実を告げよう。
そう思って告げると、また考え込むような顔をしていたかと思うとこちらを手招きする。
器を持ったままではあるけど膝だけでそちらへ寄ると、器が取り上げられ……
「ほら、口をあけてくれ」
…えっと、どこかの本で見た「あーん」の体勢になっていました。なんでこうなったのかな?
けど、私の腕が動かしにくいのも事実。多分、しばらく放っておけば動かせるようになる類のものだと思うけど……今は動かしにくいのなら、食事はとりにくい。
そういう意味では合理的な判断だとは思うけど……流石に恥ずかしい、かな
でも決めた以上はよほどのことがないと覆してはくれないだろう。なら、諦めて身を委ねたほうがいい。
そう考えなおして、差し出された肉を口に含む………美味しい。曹操って料理もできるんだね、私が作るものよりおいしい気がする…
「味はどうだ」
「ん、美味しいよ」
そう返すと「そうか」と言ってまた差し出してくる。私が咀嚼している間は自分の器にも手を伸ばしているので、邪魔になっているわけではないとわかってほっとした。
温かい食事を食べながらの二人だけの空
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