暁 〜小説投稿サイト〜
チェロとお味噌汁と剣のための三重奏曲
10. あなたと二人で、いられる幸せ
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は古紙っぽい処理が施されたベージュのもので、封はノリではなく、真っ赤な封蝋とシーリングスタンプで行われている。今時珍しい、粋な封筒だ。

 シーリングスタンプは戦艦の意匠が見て取れる。その封蝋の封を破り、僕は封筒の中の一枚の紙を取り出した。内容は……どうやら、コンサートのちらしのようだ。

「……クラシックコンサートですか」
「ああ……はぐっはぐっ……昨日のお礼と……はぐっ……私たちの非礼に対する詫びの意味もある……うまうま……」

 心持ち、ロドニーさんの声に元気とハリが戻ってきた気がした。ちらっと姿を見たが、ミイラはいつの間にかいなくなっており、代わりに、僕がよく知るロドニーさんがそこにいた。なんとか元に戻って万々歳だ。

 ロドニーさんの人間への回復に安堵しつつ、僕は再び封筒から取り出した紙に目を通す。紙はいわゆるパンフレットで、なんでも今晩と明日、市のシアターホールでオーケストラのコンサートが開催されるらしい。

「また随分と急な話ですね」
「大淀パソコンスクールの生徒の中に、そのオーケストラのメンバーがいるそうだ。その縁で、数日前にチケットをたくさん譲ってもらったと、ソラールが言っていたな」
「へぇ〜」
「そのパンフレットも、ソラールの教え子が作ったと言っていたぞ」

 ……ぁあ、なるほど。だからお日様マークが入ってて、パンフレットのラストが『我々太陽の戦士たちの演奏を、太陽になった気分で暖かくお楽しみ下さい』って締められてるのね……師匠が師匠なら弟子も弟子……ってわけか。

 封筒の中を再び覗く。中には、今日の日付のチケットが一枚、入っていた。

「これ、僕にくれるんですか?」
「ああ。今晩、みんなで一緒にどうかと思ってな」
「みんなって?」
「私と赤城……ソラールとその太陽の神通……天龍二世は留守番だが……あとは鳳翔も顔を出す」
「鳳翔さんも!?」
「ああ。なんでも昨日のお前の演奏を聴き、クラシックに興味が出てきたみたいでな。わざわざ食堂のシフトを他の者に変わってもらっていた」
「そっか……」

 胸に柔らかい暖かさが、じんわりと広がる……鳳翔さんが、僕の演奏をきっかけにして、クラシックに興味を持ってくれた……それは、楽器を弾く者として、とてもうれしいことだ。鳳翔さんの興味に、僕も少しだけ関われたという事実が、とてもうれしい。

「……それに、お前に一緒についてきてもらわないと、我々も困る」
「どうしてですか?」

 なんでも、鳳翔さんをはじめとしたみんなは、クラシックコンサートといった格調高い場に出たことが一度もないんだとか。おかげで、どんな服装でどんな風に会場に向かえばいいのかさっぱりわからないらしい。まぁ、普段聴かない人からすれば、オーケストラのコンサートなんて、敷居が高い
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