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SAO−−鼠と鴉と撫子と
11,砕けぬもの――汝の名は
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ル。
他者への優越感を求める根源的な欲望には抗いがたいものがあった。

「優越感なら、サッサと名乗り出てヒーローになればいいじゃないカ?」
「う〜〜ん。なんか違うんだよなぁ」


アルゴによれば、俺が見つかれば、即戦力として攻略組に強制参加させられるらしい。
母数が少ない攻略組の主力パーティーはこのところ、有力だが攻略未参加のプレイヤーに招集をかけているそうだ。
彼らからすれば、レイド人数に足りない現状ではとにかく人数を稼ぎたいのだろう。

別に、目指すものが違うわけではない。紛いなりにも俺は攻略をするためにココにきた数少ないプレイヤーだ。
ヤヨイに聞いた時も「私にはお構いなく、参加して下さい」と言われてしまったし。

だけど、正直に言って今の攻略組をイマイチ好きになれないのだ。
好みの問題というか、食わず嫌いの食べ物への些細な嫌悪感に似ているかもしれない。

無理に言葉で理由をつけるなら、そうそれは

「あの集団、強迫観念で動いてるじゃん」
「言うと思ったヨ。攻略組の大半は義務感やら恐怖で行動しているのは間違いないナ」

俺のココにきた理由、それに正義感やら攻略が含まれてないわけじゃない。
だけど、あの日の病室で言われて思ったのは、もっと単純な気持ちだった。

また、あのゲームで楽しめる。

ゲームの本質はデス・ゲームになったとしても変わらない。このゲームは今も昔も「ソードアート・オンライン」だ。
ベータテストの時と同じなのに、皆なぜ楽しもうとしないんだろう?

確かにプレイングを誤れば、死の危険はある。だけど、現実ではそれはないのか?
1メートル車線からズレて走行したら死んでしまうと言って車に乗らない人がどれ位いるのだろう?運転ミスをしなければ、安全なのに。

「俺は俺で好きにやるさ。誰がどう言おうと、俺はこの足で誰よりも世界を見てみたい。だから――俺が見つけた情報は任せるよ。相棒」
「任せロ、相棒。ただそのクロえもん顔で言われても、面白いだけだゾ」
「うるせぇ。今すぐ取ってやるから待ってろよ」

俺は立ち上がり、石の方へと向かっていく。後ろからニヒヒと笑う声が聞こえた。

それでいい。これでいいんだ。
クロウが探して、アルゴが売る。その関係は今も、昔も変わらない。

胸の中心に小石を置く。すぅ、と深く吸い込んだ息は、夕暮れらしい澄んだ空気で心地良い。

俺は砕けぬものに向かって、1001回目の正拳突きを繰り出した。

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