8. あなたに勇気を出してほしくて
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終え、ソラールさんが僕らを見る。その言葉は、今の僕にとっては、ある意味では死刑宣告にも等しい。
「今しがた、鳳翔が鎮守府を出発したそうだ」
「……!」
「いつもの服ではあるが、とても上機嫌で出発したそうだ。それだけ、普賢院智久のチェロを聴くのが楽しみなようだが……」
鳳翔さんが……僕のチェロを楽しみに……とてもうれしいことだし、僕自身、それを願って、そして決意したことのはずなのに……身体の震えが止まらない。両の二の腕をさすり、必死に身体を温めようとするけれど、僕の身体は冷えていくばかり。
「……ッ」
「普賢院智久?」
「ちくしょッ……決意したのに……ッ」
身体を震わせる僕を、ロドニーさんをはじめとしたみんなが、心配そうに見守っているのがわかる。天龍二世さんだって、さっきまであんなに元気いっぱいで『コワイカー!』てバンザイしてたのに、今は心配そうに僕を足元から見上げて『コワイカ……』てすんごい心配そうにつぶやいてる。頭の上に乗ってる妖精さんも、僕の頭を撫で始めた。
そんな僕の様子を、ロドニーさんはジッと見ていた。
「クソッ……決意したのに……怖い……」
「……」
「演奏するのに……演奏したいのにッ……鳳翔さんに、僕の気持ちを乗せたチェロを、聞いてほしいのに……ッ」
「……」
「こんなに震えてたら……! 乗せられない……気持ちが、伝えられないじゃないか……ッ」
僕は必死に、二の腕を擦る。だけど、僕の胸を吹き抜ける、ぬるりとした生ぬるい風は止まらない。僕の胸に嫌な感触を残し、体中から、力と熱を奪っていく。
「……お前たち」
静かに、でも良く通る声で、ロドニーさんが口を開いた。
「すまない。先に部屋から出てくれ」
「はい? そらまぁ確かに、ここに鳳翔さんが到着する前には退散する予定でしたけど……?」
「頼む。今すぐ、部屋から出てくれ」
赤城さんが、当然の疑問を投げかける。僕は今、自分のことで精一杯だから、みんなのこの後のことなんて考えてる余裕はなかった。だから、僕はてっきりみんなも僕の演奏を聞くんだろうと思っていたけれど、計画では、鳳翔さんがここに到着する前に、みんなは退散するつもりだったみたいだ。
しばらくの押し問答の末、ロドニーさんの謎の気迫に押された赤城さんとソラールさんは、頭をひねりながら練習室を出て行った。最初は退出を渋るように僕にしがみついていた天龍二世さんと妖精さんも……
「お前たちもだ。私と普賢院智久を二人だけにさせてくれ」
とロドニーさんに改めて言われて、『コワイカ……ッ』とぶつぶつ言いながら、赤城さんとソラールさんの頭に飛び乗り、二人と一緒に練習室から退室。
「……さて」
「……ッ」
バタンとドアが閉じる音が鳴り
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