第二章
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スポーツの試合から戦争が起こり激しいものになろうとした。両国はこのまま全面戦争に陥るかと思われた。
だが国際社会はこの状況を見過ごしてはいなかった。戦争が起こり彼等は即座に行動に出たのである。
国際連合の常任理事国達はすぐに集まりこう協議した。
「馬鹿な戦争を終わらせるべきだ」
「スポーツで戦争をはじめるなぞ愚の極みだ」
「あの戦争は誰の利益にもならない」
五大国のどの国も両国には権益を持っていなかった。かつてはどちらも理事国の一国の植民地であったが独立して縁がなくなっていた。
しかも双方小国で資源も乏しくどの国も進出していなかったのだ。だから彼等も今は何の気兼ねもなく『平和』を意識することができた。
こうした場合の国連の動きは速い。まさに即座にだった。
停戦決議を出両国にこう告げたのである。
「その戦争を終わらせるべきだ」
「終わらせない場合は国際社会が何らかの処置を講じる」
脅し、つまり恫喝まで入れたのである。
流石にこれは効いた。実際に平和維持軍の投入が検討されるに及び。
両国はすぐに停戦交渉に入った、そして国連の仲裁の下に両国は講和した。
領土問題はお互いに半々という形で解決した、資源問題もだ。
そして民族問題も比較的穏健な方法でまとめられた。両国の争いは周辺各国や大国の知恵で無事に収まった。
そうしてお互いに交流が深められだした。だが。
戦争が起こったことは事実で僅かだが犠牲者が出た、それでだった。
犠牲者達の慰霊碑が両国でそれぞれ建てられた。両国の市民達はその前で言うのだった。
「あの戦争で確かに死んだんだ」
「俺の弟も死んだ」
「私の甥も」
兵達の遺族もそこにいた。
「あの戦争で死んだ奴は二度と帰って来ない」
「確かに平和になって問題も解決していってる」
「それでも死んだ奴は死んだままだ」
「死んだ人間は帰って来ないんだよ」
彼等は項垂れて話すのだった。慰霊碑の中で眠る者達は何も語らない。
しかし彼等が死んだことは紛れもない事実だ。両国の国民達は些細なことからはじまった僅かな期間での戦争の犠牲者のことを忘れることはできなかった。それはもうどうしても取り戻せないものだからこそ。
すぐに終わった戦争 完
2012・9・25
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