6. あなたの声が聞きたくて(前)
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ールはわかるか?」
「……赤城さん?」
「……ああそうだ。それから、今から練習室に来られるか? ……よし。オペレーション“フライング・フェニックス”発動だ。ヤツにも協力を仰ごう。二人に連絡を頼めるか。……了解した。では私は普賢院智久にブリーフィングを行う」
「おぺれーしょん……なんだって? ブリーフィング?」
なんだか口早にペラペラと電話口で話すロドニーさんの横顔は、この前の試合の時よりも気迫を感じるほど、キリリとして目も鋭い。背はちっこいままだが、『戦艦ロドニー』の横顔を彼女は今日も見せている。
通話が終わったのか、親指でスマホをタップしたあとポケットにしまったロドニーさん。キッと前を見るその眼差しは、とても鋭い……試合の時以上の気迫を感じてしまう……。
「……普賢院智久」
「はい?」
「今日これより、ここに鳳翔を招き、お前だけの音楽発表会を行う」
ほわっつ?
「ついては、これから私と赤城で、舞台となるこの練習室の清掃を行う。お前は発表会に向けて必要な準備を整えろ」
「ちょ、ちょっと待ってください! なぜ突然?」
当然の疑問。確かに鳳翔さんは『智久さんのチェロを聞いてみたい』といい、僕はその言葉が嬉しかった。でも、だからといって、こんな急に、突然発表会だなんて狂気の沙汰だよ。発表会って、もっと前々から日取りを決めて、綿密に練習を重ねて、当日までに演奏のクオリティをがんばってあげていくものなんじゃないの? こんなに突然、『今日やります』て言って、やるものなの?
「鳳翔はお前のチェロを聞きたい」
「は、はい」
「お前は、それがうれしい」
「い、いえーす」
「なら今日、鳳翔に聞いてもらおうじゃないか」
「いやだからそれが突然だと言ってるんですっ」
「なぜだ。さっき赤城に聞いたら、今日の鳳翔はオフだぞ。これがチャンスでないとしたら、一体どんなシチュエーションがチャンスになる?」
いや、だから! 突然というところが問題なんです!
「大体、鳳翔さんだって突然『今日、僕の演奏を聞きに来ませんか? キリッ』とか言われたら、『ぇえッ!?』てびっくりしちゃうでしょ?」
「いや、それはない。鳳翔は絶対に来る。私が断言する」
あまりに自然な流れで、ロドニーさんが断言する。なんで突然のことなのに、鳳翔さんが僕の演奏を聞きに来てくれると断言出来るのか。そら確かに鳳翔さんはオフかもしれないけれど、でもだからといって、突然外出……しかも、ついこの前知り合ったばかりの僕の演奏を聴きに、わざわざ来るとは思えない。
そんなことを僕は必死にロドニーさんに説明したのだが、ロドニーさんは涼しい顔で僕の話のすべてを聞き流した上で、静かに口を開いた。
「……普賢院智久」
「なんですかっ」
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