第九章
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「安定した生活と将来があるなら」
「僕は芸人という仕事に誇りがあるよ」
「そうだろ?だから」
「それでなんだ」
「どっちもなんだよ。だからあの人をあんたに紹介したんだよ」
「お金も性格も両方も」
「そんな人ってやっぱり少ないんだよ」
多くはどちらかになってしまう。人間の世とはえてしてそんなものだ。
友人はだからチェチーリアを彼に紹介した。だが紹介された彼はというと。
難しい顔になりそれでこう言うのだった。
「どっちなのか。確かにお金は欲しいけれど性格も」
「そうだね。けれどその答えはな」
「答えは?」
「あんたが出すものだからな」
「僕がなんだ」
「そう、相談には乗れるけれどね」
友人も紹介したからには責任から逃げることはしなかった、彼も誠実でありそれでこうジュゼッペに答えたのだ。
「決めるのは自分だから」
「僕が」
「ああ、しっかり考えて見極めるといいさ」
ここでは決める、ではなかった。そちらだった。
「どっちかな」
「うん、じゃあ」
ジュゼッペは考える顔で頷いた。それから暫く考えていた。
そしてある日遂に気付いた、そして。
チェチーリアと一緒にいる時にこう彼女に言ったのである。
二人で川辺を一緒に歩いている、そうしながらこう言ったのである。
「全部ね」
「全部って?」
「うん、君の全部が好きなんだ」
こうチェチーリアに言ったのである。
「性格も何もかもが」
「私の全部が」
「性格も容姿も」
そしてだった。
「それでお家のことも」
「お金も?」
「正直に言うよ。僕だってお金持ちになってそれで将来も安心したいよ」
このことは否定出来なかった。どうしても。
だがそれと共にこのことも否定出来なかったのだ。
「それでもね」
「それでもなのね」
「僕はチェチーリアさんの性格も顔も何もかもが好きだから」
「だから私の全てがですか」
「うん、どれも同じ位好きだから」
そうだというのだ。
「何もかもがね」
「そうですか」
「うん、それじゃあ駄目かな」
「いいですよ」
チェチーリアは微笑んでジュゼッペに顔を向けて答えた。
「ここで性格だけとか言うと」
「それだとなんだ」
「嘘らしいですし。けれどジュゼッペさんは私のお金や顔のことも言ってくれましたね」
「ずっと考えていたけれど」
そして彼なりに見極めた結果はだというのだ。
「全部が好きだから」
「それで、ですよね」
「お金も性格も顔も」
本当に何もかもだった。
「ずっと、全てをひっくるめたチェチーリアさんの全てが」
「私もですよ」
チェチーリア
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