第八章
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「僕の中にどうしても」
「お金が欲しいっていう気持ちはあるんだな」
「最初は否定してたよね」
「全否定だったな」
「今も否定してるけれど」
否定はする、だがその反面だというのだ。
「欲しいっていう気持ちもどうしてもね」
「あるものだよな」
「嫌だよ、自分で」
苦々しい顔での言葉だった。
「こういうのはさ」
「お金が欲しい、楽に暮らしたい、将来を確保したいっていうのは誰にだってある気持ちだろ」
「それはそうだよ。けれどね」
「そうしたことは嫌いだからな、あんたは」
「嫌いだよ、けれど」
それでもだというのだ。
「否定してもどうしても」
「そうした気持ちはあるよな」
「そうなんだよね」
こう辛い顔で言うのだった。
「どうしてもね」
「実際に本人と付き合う様になってだよな」
「この目で見ているからね」
とにかくチェチーリアの家は金持ちだ。代々貴族の家でそこには優雅さもある。そうした本物の富を見せられ続けてはだ。
「見れば見る程」
「魅了的な生活か」
「お屋敷の中も家具も凄くて」
そうした全てに真の富があるというのだ。
「その中にいたら」
「いたいって思うよな」
「どうしてもね。けれど」
「それ目当ては嫌なんだな」
「それは変わらないよ」
この感情はだというのだ。
「けれどその反面、どうなんだろうね」
「迷っている、いや」
友人はその彼の顔を見て言った。
「わからなくなっているんだな」
「うん、そうなってきているよ」
ジュゼッペは困惑し憔悴さえ感じられる顔で言った。
「もうね」
「あの人自身がいいのか富がいいのか」
「どっちなんだろうか」
「難しいな。僕があんたに彼女を勧めたのはな」
友人自身もその理由を彼に話す。
「あんたに安定した将来を紹介してな」
「それと一緒に、だよね」
「あの人がいい人だからな」
この二つが両立してのことだったというのだ。
「だからどっちかっていうとな」
「君もはっきりとは言えないんだ」
「片方だけなら紹介しなかったよ」
「お金持ちだけだったら」
「それで性格だけでもね」
どちらだけだったならだと。友人も言う。
「そうしなかったよ」
「けれどどちらもだから」
「そういう人ってやっぱりいいだろ」
友人は富と人間性を同列としてジュゼッペに話す。
「お金持ってるだけで幸せになれるかっていうと」
「なれないからね」
「そう。性格の悪い人と一緒にいたくないだろ」
「それはちょっとね」
ジュゼッペも彼の言葉に考える顔で答える。
「勘弁して欲しいよ」
「そう。そして逆に
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