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カオスになる心
第四章
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「泊まったこともないよ」
「じゃあどういう企画だったのかな」
「中でどれだけ凄いホテルなのか視聴者の人に紹介する企画だよ」  
 他の国でもある企画である。そのホテルがどれだけ立派で美味しい料理を出してくれるのかを紹介するというものである。
「それでそこでご馳走を食べていたけれどね」
「それはいい企画だね」
「まあね。そうした企画は時々来るから」
 それは彼もよかったと言う。
「けれどそれでもね」
「それでもなんだ」
「うん、そうした仕事も何時なくなるか」
 またこした話になる。
「わからないんだよ」
「本当にそうした話ばかりだね」
「だってその通りだから」
 とにかく明日も知れない、そんな仕事だからだというのだ。
「まあそういう話は置いておいて」
「そうだよ。中に入ろう」
「わかったよ。それじゃあね」
「もう相手はこの時間にあんたが来ることは知ってるからな」
 友人は笑顔に戻ってジュゼッペに告げる。
「中に入ろうか」
「うん、わかったよ」
 ジュゼッペは友人の言葉に頷いた。そのうえで車は野外の駐車場に停めて屋敷の正門に向かった。駐車場は屋敷の敷地の中にあったがその広さもかなりのもので屋敷の周りの庭にしても相当な広さだった。
 その広い庭を二人で進み屋敷の門の前まで来る。するとそこには数人のメイド達が微笑んで立っていた。
 その彼女達が二人に笑顔で頭を下げて言ってきた。
「はじめまして」
「ようこそいらっしゃいました」
「はい、お話はもう届いていますね」
「そちらの方がですね」
「お嬢様に紹介したい方ですね」
「テレビでよく観る方ですね」
「そう。ジュゼッペ=マルスキーノだよ」
 彼はメイド達に微笑んでジュゼッペに手を向けて紹介した。
「仕事は芸人だよ」
「そうですね。では」
「後でサインを下さいね」
「うん、いいよ」
 ジュゼッペはメイド達の微笑んでのお願いには自分も微笑んで返した。ファンサービスは決して忘れないのだ。
 だからこう答えそのうえでだった。
 友人に密かにこう囁いたのである。
「そもそも君がどうしてそのお嬢様と知り合いなんだい?」
「大学で一緒だったんだよ」
「大学で」
「そうだよ。こう見えても僕はボローニャ大学でさ」
 イタリアの歴史ある学校だ。卒業生には悪名高き法皇アレクサンドル六世がいる。あのボルジア家の当主であり奸智と謀略の人物として歴史に名を残している。
「彼女とは同じ学年、同じ学部でね」
「それで知り合いなんだ」
「友人だよ」
 それで知っているというのだ。
「あんたもボローニャに来れば話はより早かったんだけれどな」
「仕方ないじ
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