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カオスになる心
第三章
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「既にもういい人を知ってるからね」
「ひょっとしてそれでこんな話をしたのかな」
「そうだよ。まあ一度会ってみてくれるかな」
「会うだけなら」
 ジュゼッペもそれならと返す。こうして話は決まった。
 ジュゼッペはその人と会うことにした。その会うパーティー会場に向かう途中の車中で車を運転する友人は助手席の彼にこう言った。
「相手もあんたのことは知ってるからな」
「そうなんだ」
「そう、知ってるからね」
 こう彼に言ったのである。
「あんたがピン芸人であることはね」
「じゃあ僕が明日も知れない身分ってことも?」
「それは知らないよ」
 彼の悩みのことはだというのだ。
「全くね」
「ピン芸人のことを?」
「そう、お金持ち過ぎておっとりとした性格でね」
 だからだというのだ。
「ピン芸人のこともね」
「世間知らずなのかな」
「うん、そうだよ」
 まさにそうだというのだ。
「本当にね」
「ひょっとしてだから」
「そう、ゲットするには最適だよ」
 そうだというのだ。
「だからどうかな」
「余計に悪いんじゃないかな」
 ジュゼッペは彼と話をしていてこの話ガ出たところで最初から思っていたことをさらに深刻なものにさせて述べた。
「それだと」
「だから。生きる為だよ」
「何もかも生きる為なんだ」
「別に犯罪とかする訳じゃないよ」
 話を勧める友人は涼しい顔である。
「お金持ちのお嬢さんと結婚するだけじゃないか」
「それでその人の資産で生きていくんだね」
「そうだよ。芸人を続けるもよし」
「絶対に続けるから」
 ジュゼッペにしてもピン芸人としてのこだわりがある。だから言うのだ。
「僕はこの仕事に誇りを持ってるからね」
「だからこそだね」
「確かに不安はあるさ」
 将来への不安はかなり大きい、それでもだというのだ。
「それでも好きな仕事だしね」
「だからだね」
「そう、やっていくから」 
 ジュゼッペはこのことは確かに言う。
「何があってもね」
「先はわからなくても」
「やるよ。絶対に」
「そう、そしてその後ろ盾を手に入れる為にも」
「そのお嬢さんと?」
「そうだよ」
 友人もそうだと返す。
「会ってそうして」
「結婚だよね」
「そこまでこぎつけるんだよ」
 友人は楽しい調子でジュゼッペに告げる。
「いいね」
「ううん、どうしてもね」
 そうしたやり方はだと言うジュゼッペだった。だが車はその相手がいる場所に彼が考えているよりもずっと速く向かっていた。
 それで着いたのは見事な屋敷だ、ジュゼッペはその屋敷を見上げて言った。
「如何にもだよね」
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