第二章
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「そういうのって」
「嫌かい?」
「何か打算的で」
「いやいや、それでもだよ」
友人はさらに言う。
「生きる為にはね」
「そうしたことをしても」
「あんただって将来不安だよ」
「ピン芸人は誰だってそうだよ」
それがイタリアでもどの国でも同じだというのだ。
「明日がわからないんだよ、明日が」
「一寸先は闇だね」
「そう、闇だよ」
まさにそうだと友人に返しもする。
「本当にどうなるかわからないからね」
「大変だね」
「うん、けれどそれでも」
ジュゼッペはやはり浮かない顔で友人に言う。
「そんな。打算的なことはね」
「生きる為でも?」
「するものじゃないと思うけれど」
「いや、実際にそうした人は多いからね」
友人はそのジュゼッペに世の中の現実、少なくとも彼はそう思っていることをこう言ったのである。
「女の子でもお金持ちと結婚したりとかあるじゃない」
「後妻に収まったりとか?」
「そう、あるからね」
「だからそういうのが好きじゃないんだよ」
ジュゼッペの顔はうんざりとした感じにさえなっていた。とにかくそうした話は好きではない、もっと言えば嫌いだというのだ。
「この腕一本で生きているとか」
「現実は甘くないよ」
友人はその彼にシビアに告げる。
「消えていった芸人多いね」
「消えて後は安月給で働ければいいけれど」
そうならない場合もある。
「中にはよくないことをして生きてる人もね」
「いるよね」
「うん、それは僕も知ってるよ」
「じゃあここは」
友人は強い声でジュゼッペに告げた。
「わかるね」
「お金持ちのお嬢さんをゲットする」
「そう、そうするんだよ」
「まあそもそもゲット出来るかどうかって問題もあるけれどね」
前提となるそのことを実現出来るかどうかもある。その金持ちの後妻に入るという話にしてもそれなりの運と頭の回転が必要である。
それで友人もそのことを言うのを忘れなかった。
「顔と頭が必要だから」
「そもそもそれが問題だよ」
「けれどあんたは顔はいい」
確かにそれは悪くない。性格はともかくその顔立ちはお笑い芸人にしてはかなり整っている、だからドラマにも出演できているのだ。
「スタイルもな」
「いいんだね」
「そう、いいから」
ジュゼッペ本人にこう告げる。
「それに頭も悪くないじゃないか」
「そうかな」
「お笑い芸人は頭がよくならないと務まらないよ」
「頭がよくないから今困ってるとかは考えないの?」
「僕が見たところあんたは結構頭がいいさ」
頭の回転がいい、ということだ。
「だからそうした相手が実際に出て来
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