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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 3
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はよく見えなかったその姿が、明るみのもとではっきりと見えた。
とんがり帽子の年老いた妖精。もしも場所と状況がちがえばかわいいと感じたかもしれない。皺にうもれた顔に浮かんだ、悪意と嘲りに満ちた笑いがなければ。
そいつはすぐに背中に引っ込んで消えた。
「あ……あ……」
録音なのだから少しくらい間が開いても編集してもらえる。硬直した喉を強引に奮い立たせ、科白を吐く。
「イエロー・トゥインクル・シトリン! の、花園彩菜です」
言えた。
混乱と動揺の色を見せずに、はっきりと科白を口にすることができた。
「ねぇ、いまちょっと噛まなかった?」
ピンク役を割り振られている宇佐美咲綾がすかさず茶々を入れると、ほかのメンバーもそれに追従してイジリにかかる。
「間があったよね〜」
「放送事故になっちゃうじゃない」
「なぁに、わざととちって目立とうとしてない?」
ちょっとしたアクシデントは場を盛り上げるスパイスになり、自己紹介だけで終わるところが延長されてにぎやかなトークができた。
(やった……!)
妖虫老人の姿は見えない、気配もしない。けれども彩菜には相手がなんとなく悔しがっているように思えた。
「いい感じだったね、これなら明日のオーディションも上手くいきそうだ」
収録後、上機嫌で話しかけてきたマネージャーの松岡の顔を思わず見上げる彩菜。しまった、という表情になる。オーディションが明日にあるということを秘密にしておくつもりが、つい口をすべらせてしまったようだ。
下手に知っていると緊張するから、ぶっつけ本番がいい。
日頃から口にしている松岡の考えだ。
「おっと失言失言、緊張しているのはこっちのほうみたいだね。今日の練習はそこそこにして、明日に備えてゆっくり休みなさい科白の他にも、アカペラで歌もあるからね」
素直に帰路につく。
雑踏のなか、人ごみの足元を縫って小さな影がついてくる。視野の片隅になにかが見える。
あの赤いとんがり帽子をかぶった妖虫老人だ。
「〜♪♪♪」
もう今までほどの恐怖は感じない。彩菜は小さな声で明日のオーディションで披露することになる来期アニメのエンディングを口ずさむ。
とっくに日が落ちて夜の闇がよどんでいるが、歌に集中しているとちっとも気にならなかった。妖虫老人の気配も消えた気がする。
「ただいま」
返事はない、いつものことだ。
居間で母がTVを見ていた。関東近郊の名所をまわる、なんてことのない紀行番組だ。
「お母さん」
呼びかけても母はふりむこうともしない。
「明日、オーディションがあるの。合格すればエンディングの歌も歌えて、CDを出させてもらえるかもしれないから、期待して
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