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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 3
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がはっきりとは見えない、視界の片隅をよぎる程度だ。
ひっひっひ……。
あの厭な笑い声も聞こえるような気がする。嘲りをふくんだ哄笑が耳の奥にこびりついて離れない。
妄想や幻などではない、自分は二度もあのいやらしい怪物にまだ狙われているのだ。
(なによ、くるならきなさい。こっちにはこれがあるんだから!)
怪物の気配が濃くなるたびに護符に手をのばす。そうすると妖しい気配は遠のいていく。やはりこの札には効果があるのだ。
その日はラジオの録音があった。ほんのひとこと程度の出演だが、彩菜には大きな仕事だ。
学校帰りに制服のまま現場へ向かう。彩菜のランクでは出迎えなどない。
雑居ビルの一角にある制作プロダクション事務所。そのさらに片隅にある小さなスタジオでの録音だ。
あるSNSゲームのラジオドラマを放送している番組で、何人かのおなじランクの子たちといっしょにそのゲームにちょっとした役で出た。
お世辞にも綺麗とは言えないビルに入ると、あまり人の気配はなかった。人の気配もないが怪物の気配もない。
だれもいないエレベーターに乗るのも階段を使うのも怖くない。新しくできた陰陽師の友達の存在が彩菜を強気にさせていた。
「おはようございますっ」
「やあ、早かったね。ほかの子たちはまだだよ」
現場にはすでにマネージャーの松岡が来ていた。今日、ここにあつまる声優は彩菜をふくめて五人。みんな女性で、彼女たちは主人公と敵対する悪の美少女部隊の声を担当している。
予定の時間まで少しある。事務所内は外とはうって変わってにぎやかで、人がせわしなく動いていて活気に満ちていた。
ものを創る気概にあふれる、この空気が彩菜は好きだ。だが、乱雑に物が積み上げられたこの場所は、あまりにもなにかが隠れ潜む場所が多すぎる。
(集中、集中! あたしにはこのお札があるんだから)
四畳もない狭いスタジオにまとめて五人が詰め込まれた。この人数では椅子に座っての収録は無理なので、上から吊り下げられたマイクを取り囲んで本番に入る。
パーソナリティの女性声優にうながされてひとりずつ名前を言い、作中で使われる科白をそろって叫ぶ。それだけだ。
金魚鉢の向こうからミキサーが開始の合図、キューを送る。
「レッド・トゥインクル・ルビー! の、深沢茜です」
「ブルー・トゥインクル・サファイヤ! の、板山香です」
次が彩菜の番だ。パーソナリティの先輩声優が目で合図してくれる。小さく息を吸って声を出そうとした瞬間。
向かい側に立っている女性声優の肩越しに、おかしなものを見た。
赤いとんがり帽子をかぶった貧相な老人の顔だった。ふしくれだった枯れ枝のような手を女性声優の肩に置いている。
川平が襲われた時、暗がりの中で
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