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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 3
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っていた。彼女がいないものであるかのようにふるまうことも多い。
 幼い頃はあれこれと過剰なくらい世話を焼いてくれた。児童劇団に入りたいと言った彩菜に反対もせず喜んでつきそってくれた。
 認知症ではないかとうたぐったときもあったが、彩菜以外の人と接するときはごく普通で、事務職のパートもそつなくこなしているようだった。
 母は、彩菜だけを見ない。ふりむいてくれない。
 
「あたしがなかなかデビューできないからだ」

 自分が母を失望させてしまったのだと、彩菜は考えている。
 わがままを言って児童劇団に入り、子役としてドラマやバラエティ番組に出演したのはいいものの、それっきりだ。運動は得意ではない、勉強はもっと苦手。けれども彩菜の容姿、そして声をほめてくれる人が何人かいた。彩菜はたったひとつ、自分にもできるかもしれないことを、自分にしかできないことに挑戦しようとした。
 母自身を感動させることはできなくとも、歌ったり演技をしたり、そういうことで人々に認められれば、客観的な評価を得ることができれば、母はふたたび振り向いてくれる。自分のことを認めてくれるはずだ。
 そう考え、がんばってきた。
 いつの間にか流れていた、頬を伝わる冷たいものに我に返る。

「もう、お風呂入って早く寝ちゃおう!」

 熱いシャワーを浴びて浴槽に浸かる。聖蓮寺で介抱され、陰陽塾の人に介抱されたさいに軽い食事を取ったので腹は空いていない。

「賀茂秋芳さんと倉橋京子ちゃん……。鰻のかば焼きもどき、美味しかったぁ」

 恋人同士だというふたりはおたがいに料理を作ってはシェアしているという。仲が良くて微笑ましい。彩菜は秋芳が作った精進料理の味を思い出した。

「すり下ろした蓮根と山芋にお豆腐、こんどあたしもやってみよう」

 悪いことはすべて忘れ、明日に備えて布団に入る。京子に霊気を補充してもらった尊勝陀羅尼の札を身に着けて。
 このお札は一生のお守りになることだろう――。




 
 翌日。
 最初に妖虫老人に遭った道を避けて学校に通うことにした。あそこだけはもう二度と通らないつもりだ。ただ落ち着いたら呪術BAR『メイガス・レスト』にだけは顔を出してお礼をしなければと決めていた。
 だが忌まわしいものは彼女が避けようとしても忍び寄ってくる、視野の片隅をかすめる不気味な影に悩まさられるようになったのだ。
 学校で授業を受けている時に、それは机の下にひそんでいるように思えた。あるいはカーテンの裏側やロッカーの中に。
 お昼に購買で買ったパンを食べていたら、床に落ちていたパン屑が消えていた。
 学校の帰り、妙な気配に振り向くと電柱の影や側溝に、なにか小さな生き物が見え隠れしているのが見えた。がさごそと蠢く大きな虫のようなものが。だ
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