第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「何も問題はありませんので」
「だからですか」
「生きる為に必要なお金があれば」
寄付から、無論彼等自身への寄付だが最低限のそれさえあればだというのだ。
「何もいりませんので」
「だからですか」
「お気持ちだけ頂きます」
彼等への余分な寄付はだというのだ。
「そして余った分は」
「神にですね」
「お供えとさせて頂きますので」
「それでいいのですか」
「何も不都合はありません」
その満ち足りた笑顔での言葉だった。
「ですから」
「そうですか。それでは」
「はい、そうさせてもらいます」
こうしてヨセフも家族達もラビとその一家として慎ましやかに暮らしていく。そこには豊かさというものはなかった。しかし彼等は穏やかに過ごしていき。
歳月が経ちヨセフは老人になった。ラビの仕事は息子に譲り隠居になった。それでシカゴの公園で友人達にこう言った。
「私は夢を適えました」
「そういえば若い時に言っておりましたな」
「そうでしたね」
古い友人達だ。実は若い時に彼の夢を聞いていた者達だ。その彼等もそれぞれの人生を送っていた。それでこう彼に応えたのd。
「社会的に成功するのではなくですね」
「慎ましやかな幸せ」
「それを適える」
「そうした幸せを適えたいと仰っていましたね」
「そしてです」
ヨセフ、年老いたがそれでも満足している顔の彼が言う。
「私はそれを適えられました」
「見事にですね」
「それができましたね」
「果たせましたね」
「アメリカンドリームです」
ヨセフは笑顔で述べる。
「それが適えられました」
「貴方のアメリカンドリームを」
「傍せられましたか」
「見事」
「そうです。できました」
こう言うのだった。
「私は今それを感じています」
「そうですか。そしてそれもですね」
「アメリカンドリームなのですね」
「社会的、経済的に頂点に上り詰めることではないのですね」
「それだけがアメリカンドリームではない、貴方が仰っていましたが」
「そのアメリカンドリームをですか」
「私は果たしました」
成功したというのだ。アメリカンドリームを果たしたというのである。
「ラビとして生き素晴らしい妻に出会え」
「そして幸福な家庭を築いた」
「お子さん達も健やかに育たれましたね」
「孫、曾孫達に囲まれています」
今はそうなっているというのだ。
「これ以上の幸せはありません」
「そうですね。本当にですね」
「そうしたアメリカンドリームもあるのですね」
「それがようやくわかりました」
彼等もそのことがわかった。彼等もそれぞれの人生を歩み満足してきてい
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ