第三章
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だからだ。岡っ引きは彼にこう忠告するのだった。
「いいな。すぐに捜せ」
「さもないとか」
「見つける前に死んでおるぞ」
岡っ引きは真剣な顔で己の前にいる彼に言った。
「まことに急ぐ様にな」
「わかっておる。ではな」
「うむ。しかしわしはこうして御主に同じ口で言うが」
「何、幼馴染みではないか」
蘭学者と岡っ引きでは立場が違う。彼は士分ではないがそこそこの名のある者なのだ。岡っ引きがあまりよくない立場だというのに対して。
しかしお互いに子供の頃からの馴染みなのでだ。彼はこう言ったのである。
「いいではないか」
「そうか。そう言ってくれるか」
「しかし。急ぐべきか」
「それは確かじゃ。さもないとまことに死んで終わりだからな」
「わかった。それではな」
岡っ引きの言葉に頷きそうしてだった。彼は吉原でその娘をさらに捜した。だがそうした手掛かりでは迷路の如き吉原では海の中で藁を掴む様なものだった。
一向に見つからず時ばかりが過ぎる。そうして。
彼は次第に焦りだしていた。店という店に入って捜す。だがどの店でもこう返事が返るばかりであった。
「みちのくのおなごは多いであるんすよ」
「そう言われてもわからないですな」
「あの、花魁を買わないのなら用はないでありんすよ」
「ここはお帰り下さい」
こう言って返されるだけだった。そして。
やはり何も進まないまま時だけが過ぎて。ある日のことだった。
江戸は火事が多い。火事と喧嘩は江戸の華と呼ばれるがとにかく火事が多い。そして吉原もどの江戸にある。
吉原で出火した。そうして。
吉原中が火に包まれた。その火は江戸中から見られた。
彼はそれを見てすぐに吉原に向かおうとする。もしやと思い。
「若しあの中にいれば・・・・・・」
師の娘が火に包まれて死んでしまう。それだけは何とかしたかった。
それで吉原に向かおうとする。だがそれは。
友人である医師と岡っ引きがだ。その服の袖を引っ張って止めたのだった。
「馬鹿なことをするな、あの中に入ればだ」
「あんたも死ぬぞ」
「しかし」
「しかしも何もない。火事はどうにもならぬ」
「相手になるものではないわ」
だからだとだ。二人で必死に彼を止める。
「行くなら火が止まってからだ」
「それからにするんだ」
「わしも焼かれるというのか」
「だからここは向かうな」
「ここにいるんだ」
「くっ・・・・・・」
彼は止まるしかなかった。吉原の火はあまりにも強くとても行けるものではなかった。それでだったのだ。
彼は吉原に行くことができなかった。そうして。
火は吉原を焼き続け消えた時にはそこは焼け野
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