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勇者にならない冒険者の物語 - ドラゴンクエスト10より -
始まりのジュレット4
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 ふふふっ、と満足げに笑うチョウキを見て、ジアーデは両手で頬を抑えながら2人の少し後ろを歩いている。
 普段から赤い肌が信号機のように真っ赤になっていた。

(にゃんでかにゃ!? にゃんでかにゃ!? 冷静ににゃってみるとにゃんでジアーデはバルジェンにおんぶされてたにょかにゃ!?)

 少し先を並んで歩くウェディとエルフをしばらく眺めると、うっとりとして大変な事を考える。

(ウェディが美味しそうな匂いしてるからきっといけないのにゃ。スパイスをかけてパクってすればきっと治るにゃ。・・・パクって食べたらきもちいいかにゃあ・・・?)

 ふと、振り向いたバルジェンと目が合う。

(キモチ・・・・・・)

「おおい、ぼーっとしてるけど大丈夫かー?」

「って一体何を考えてるのにゃあジアーデは!! キモチイイってなんにゃ!?」

「いやいや・・・。何考えてたか知らんが本当に大丈夫か?」

 怪訝そうに伺うバルジェンの瞳をじっと見つめてフリーズするジアーデ。
 なんだか心配になって彼はジアーデに向き直って小首を傾げる。

「おおい、ジアーデ? 大丈夫か?」

「・・・っは!!!」

 びっくりしたように目を見開いて両手をワナワナさせるジアーデ。
 え? という不思議そうな顔をするバルジェンに、ジアーデが叫ぶ。

「呑むにゃ! 快気祝いにゃ! 今宵は祝杯にゃあ!?」

「いやいや、本当に大丈夫かあんた」

「にゃーーーーすっ!!」

 奇声を上げてジアーデがバルジェンに突進した。
 うおおっ! っと慌てて飛びのく彼の脇をすり抜けて、ジアーデはそのまま走り去ってしまった。

「宴会にゃー! 今日は呑むにゃー! バルジェンたべていい!?」

「ダメだよ! 俺は食い物じゃねーよ!!」

「うにゃああああっっっはーーーーーーー!?」

 ジアーデはみるみる遠くなり、あっという間に宿屋に入っていってしまった。
 後に残されたウェディの青年とエルフの少女は、唖然としてその場に立ち尽くした。

「ええと、あの娘って結構ああなのか?」

 目が点になってオーガ娘の走り去った軌跡を眺めるバルジェンに、チョウキも戸惑ったような表情で同じように彼女が走り去った軌跡を眺めて言った。

「付き合いはまだ浅いからわからないが、あんな暴走もするのだな・・・」

「・・・大丈夫なのか?」

「きっと大丈夫。だと、思う」

 2人は多少の不安を覚えながらも、宿屋に向かって歩き出した。
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