第3章 儚想のエレジー 2024/10
21話 望まぬ再会
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る。
「なんだお前、なんか用かよ? こっちは取り込み中なんだ。さっさと散れ」
「いい歳こいた大人がガキを囲んで取り込み中か。アンタ達いい趣味してるよ」
売り言葉に買い言葉というか、挑発的な言葉に対して軽率な皮肉を返すのは、俺自身も荒んでいるという兆候なのだろうか。朝のヒヨリとの一件から、ティルネルとの居心地の悪い共同捜索と今日はまだ半日しか経っていない筈なのに悪いことが立て続けに起こっているのだから責められないとして、対峙する軍のプレイヤーには見知った顔は一人としていないことに気付く。二十五層における《アインクラッド解放軍》の損害、それを受けて前線から撤退した後に加入したプレイヤーだろうと予想して、かつての顔見知りでなかったことに内心で安堵しつつ、変わってしまった軍の姿に一抹の落胆を感じつつ改めて彼等に向き合うと、第一声を切り出した軍のプレイヤーは怒りに顔を引きつらせていた。
「……ナメた口聞いてんじゃねえぞ? 俺等はこのガキどもに納税の義務ってモンを教えてやってたところなんだよ」
「『教えてもらってた』の間違いじゃないのか? ………って、危なっ」
聞き慣れない上に気に入らない響きの単語を皮肉ると、片手剣の刃が鞘を滑って抜き放たれた。圏内だからダメージを負うことは一切無いが、反射的に躱すと隙だらけの脇腹を蹴って薙ぐ。この応酬だけで中層辺りのプレイヤーの方がもう少しマシな立ち回りをするだろうと冷めた評価しかさせてくれないほどに、彼等の実戦経験の乏しさが目に余る。
察するに、第一層で着込むには不釣り合いな性能の――――それでも最前線のプレイヤーのそれとは比較するべくもないが――――装備は、どうやら納税を強制するための脅しの意味合いと、あまり考えたくはないがその納税の成果なのだろうか。先程の情報収集に協力してくれたプレイヤーが足早に去ったのは彼等が原因とするならば、ここの住人に危機として認知される程度には徴税とやらを行っているのだろう。リソースの平等分配を掲げていたギルドとは思えない変貌ぶりだ。
「………野郎、ふざけやがって!?」
「正当防衛だ、やっちまえ!」
正当防衛を主張できるのは俺なのでは、という質問は当然取り合ってもらえず、挙句の果てに囲まれてしまった。とはいえ、この状況に乗じてティルネルは既に隠蔽効果のあるエルフ系Mobが有する専用スキルを発動させていた。《まじない》と呼ばれるそのスキル群は、SAOの舞台であるアインクラッドが現在の百層にもなる空の城を形成する以前に存在していた《魔法》という奇跡の残り香なのだというが、その効果は補助的なスキルに大きく偏るが、正しく優秀の一言に尽きる。俺が軍の注意を惹きつけているうちに十字路を後退して隠れ率を大幅に上昇させ、塀を渡って背後を取ってい
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