暁 〜小説投稿サイト〜
シークレットガーデン〜小さな箱庭〜
立食パーティー編-2-
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い。

「エッヘン、何を隠そうルシアはドルファ主催の草競馬大会に優勝したんだよっ!」

 みかねたランファが代わりに口を開いた。まるで自分の事のように胸を張って偉そうに自慢げに鼻息を荒くさせて。

「凄いじゃん」

 リアに軽く背中を叩かれる。少し痛い。
皆で楽しく他愛のない雑談をしていると、ずっと胸を締め付けていた場違いなところに来てしまった子兎のような恐怖感は何処かに消えてしまったようだ。……良かった。これなら純粋にパーティーを楽しめそうだ。ルシアは、ほっと息を漏らす。

「みなさま、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます」

 声がし振り返えってみると、部屋の中央。作られた特設ステージのような場所にぽつんと立たされた一本のマイクの前に見たことの無い服装をした女性が立っていた。
大人の女性といった妙齢な魅惑的な色化のある女はしっとりとした声で話を続ける。

「ドルファフィーリングのカタリナと申します。総帥のバーナードに代わり厚く御礼申し上げます。
ご存知の通り、我が社は衣食住、みなさまの生活に関わる様々な事業を展開しております。
また経済活動のみならず、社会貢献もドルファが目指す所で、孤児院の運営など、慈善事業にも積極的に取り組んでおります。
“みんなの心に太陽を”それがドルファの精神なのです」

 女は静かにしっとりとした口調で語る。

「モグモグ」

 花より団子の彼らにそこ声は届いてはいないようだが……。

「もぐ……ランファ……ちゃんと話聞かないとダメだよ」
「ふぁーい。モグモグ」

 初めて見る料理はどれもこれも、頬っぺたが落ちてしまうんじゃないかと思うくらい美味しいものだった。料理を口へ運ぶ手が止まらない。二日間なにも食べていなかったこともあり、空腹だった胃袋にはどんどん吸い込まれるように入ってゆく。

「今宵はみなさまと親睦を図りたく、このようなパーティーを模様させていただきました。どうぞご存分にお楽しみくださいませ。
…さぁ、私の話はこれぐらいにして、みなさまにはピアノの演奏を楽しんでいただきましょう。ミスター紫龍!」

 招待客達の視線が一気に動く。それはもう一つの特設ステージに置かれていたグランドピアノ。その傍立っているのはムラクモの上司である、白いスーツがよく似合う、王子様としか言えない身なりをしている好青年紫龍。
彼はゆっくりと、そして上品さを感じさせる、お辞儀を招待客に向けて一回。
頭を上げるとピアノの方へ向き直し、椅子に座り鍵盤の上に手を添えた。

「……わあ」

 その瞬間――世界から時間(とき)が消えた。まるで時間が止まったかのようだった。
食べることに夢中だったルシアとランファも料理を食べる手を止めて、演奏に聞き惚れた。
この
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