立食パーティー編-1-
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仲間内だけで行われた静かなる厳かな死者のご遺体のない葬儀から二日。
この二日間なにも手が付かなかった。朝日が昇れば一応身体を起こし寝具の上から起き上がる。だが寝巻から着替える事も顔を洗い身なりを整えることもしない。ただじっと寝室で静かに窓の外の景色を眺めているだけ。雨があがり雲がはれ、雲一つ無い晴天の青空を自由に飛び回る小鳥たちを恨めしそうな瞳で眺めているだけ。
朝食、昼食、夕食。一日三回、決まった時刻に運ばれてくる豪華絢爛な料理も今は喉を通らない。胃が受け付けなかった。
運んで来てもらったムラクモには悪いと思いつつ、一度も手を付けずないまま返してもらっていた。
だが二日目の朝、今日は断れなさそうだ。
力なくコンコンと叩かれるドア。だが返って来る返事はない。それを知っている客人は「……入りますね」と小声で囁きドアを開けた。
入って来たのはムラクモ。いつものように赤色のポンチョをはおい、中にドレスのような赤いワンピースを着ている、が今日はどことなくいつもと雰囲気が違うような気がする。
「……クンクン」
「ひゃわっ!?」
部屋に入ってすぐ近寄って来たランファに身体全身の匂いを嗅がれ、ムラクモは驚いた声をあげ後退りした。ランファはそんなのお構いなしと、しつこく嗅ぎ続け、満足したように微笑み、
「ムラクモさん。香水付けてるー」
ずるいあたしも付けたいー、とまるで玩具屋で駄々を捏ねる子供のような事を言いだした。
でも確かにムラクモからは鈴蘭のような微かに甘いいい香りがする。物陰にひっそりと可憐に咲く彼女によく似合う香りだ。それによく見れば、唇に薄く口紅を塗っているようだ。どうりでいつもと雰囲気が違うわけだ。女性はちょっとしたお化粧だけで、大きく見た目が変わるものだから。
「今日のムラクモさんはお洒落さんで素敵ですね。 寝巻姿で恥ずかしい……」
頬を紅潮させ照れ笑い。ルシアは頭の後ろを掻きながら言う。
「普段はこんなお洒落なんてしないんですよ? 今日はドルファフィーリングのパーティーがありますから……ああっ!」
ハッとした表情をしてムラクモは大きな声をあげた。
「そうでしたっ。延期になっていたパーティーが本日の夜開催されることになったので、その事をお伝えに来たのでした。
すみませんっ、大事な事なのに……すっかり忘れてしまって……」
申し訳ないとしょぼんと顔を俯せるムラクモにルシアは
「気にしなくていいですよ。誰だってミスの一つや二つあるものですよ。僕だってまだこんな姿だし……」
自分の今の恰好を改めてまじまじと見ながら言った。
確かに起床してから数時間は経っているのにまだ寝間着姿、寝ぐせだらけの髪、顔も洗っていないとなれば目も当てられない。
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