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千雨の幻想
4時間目
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「あはは、は……、あー笑ったり笑った、こんなに笑ったのは久しぶりかしら」

 瞳に涙を浮かべ、楽しそうに言う。

「確かにあいつのことは知ってるわ、ここ数十年会ってはいなかったけど私とあいつは友達よ」

 パチェほどじゃないけどね、と補足する。

「あいつの吸血鬼としての力はそれほどじゃないけど、再生能力や魔法使いとしての力は目を見張るものがあるわ、あいつ不死だからなかなか殺せないし、それ以前に並大抵の人間は氷漬けにされるわね」

 そもそも吸血鬼だからというより彼女だから恐れられてるのよね、とレミリアは言う。

「一回あってみるのも面白そうだけど、あそこって邪魔な結界があるのよねえ」

 結界、そう聞いて千雨の手に思わず力が入る。
 麻帆良すべてを覆う巨大な結界。これには外部からの侵入者の感知、特定の人物・魔物・妖怪の能力低下などの効果を持つが、その中でも常に行使され続けているものがある。
 それが、思考誘導である。
 といってもそう効果のあるものではなく、せいぜいが明らかに不自然な物を自然であると思い込ませる程度である。
 これは魔法の存在や世界樹の存在を隠蔽するために行使されている。
 麻帆良に住む魔法使いたちは常に魔法が世界に知られるようになるような事態を未然に防いできた、この結界もその行動の一環であると考えられるが、不幸なことに千雨には一切効果を及ぼすことはなかった。
 故に彼女は真実を見続け話続け、孤立した。
 魔法をじかに見たものには思考誘導効果の限界を超えるため、魔法を認識してしまう。
 そのため魔法使いたちは目撃者の記憶を消すことが多いが、千雨は魔法を見たわけではなかった。
 ただ普通に暮らし、普通に考え、普通に発見してしまった。
 そこに魔法使いたちのミスや油断はなく、原因は千雨本人にあるのだが、それはまた別の話。
 もちろん、千雨のことは魔法使いたちの知れ渡ることとなった。
 しかしただ普通に暮らしているだけの女の子に記憶消去という荒業を使うことにためらいがあり、またここで記憶を消しても再び異常を認識してしまうのではないかという懸念も挙げられた。
 そうした会議が重ねられた結果、彼らが下した結論は『傍観』であった。
 このまま異常を見ないふりして生きていくのもよし、こちら側を探りだしたら招き入れるもよし、……最悪彼女が異常に耐えられず麻帆良を去るのも傍観するつもりだった。
 最初のうちは監視が付いていたが、何も行動を起こさない千雨に安心したのか三年もすると監視もつかなくなった。
 彼女が、幻想郷に出入りしているとも知らずに。

 閑話休題。

 つまり、千雨にとってその結界は幼き頃のトラウマを作った元凶である。
 今の千雨にはそれが必要なものであったことは理
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