90部分:TURN9 ドクツ動くその五
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TURN9 ドクツ動くその五
「私は大統領と首相を兼ねた総統になった」
「それが今の貴女ね」
「そうだ。そしてだ」
「総統になって終わりではないわね」
「私にとって権力はだ」
総統になってドクツの権力を一手に握った。しかしだ。
それもどうかとだ。レーティアは言うのだった。
「私のやるべきことを果たす為の道具だ」
「それに過ぎないわね」
「それに過ぎない。大切なことはだ」
「総統になり何をするかね」
「その通りだ。私はこの国を世界の盟主にしてみせる」
こう言い。ドイツをプロイセンを見た。
そしてそのうえでだ。こうも言うのだった。
「祖国達も楽しみにしてくれ」
「楽しみか」
ドイツがだ。そのレーティアの言葉に顔を向けた。そうして言う。
「俺は。少なくとも生きている」
「今こうしてだな」
「それだけでも奇跡に思える」
「欲はないのか?」
「ないと言えば嘘になる」
少なくともだ。ドイツは嘘は吐かなかった。
「俺も。かつての様にだ」
「欧州に覇を唱えたいな」
「そうしたいとは思っている」
「それは俺もだぜ」
プロイセンもそう思っているとだ。彼は少し不敵な顔で述べた。
「絶対にな。またのし上がってやるぜ」
「その意気だ。私は祖国達、そして国民の為にあるのだ」
私はなかった。レーティアにだ。
その彼女の意気もだ。ここで言ってみせたのである。
「私はドクツと結婚した男なのだからな」
「言うわね」
今のレーティアの言葉にだ。グレシアは少し驚きの声をあげた。
そしてだ。こうレーティアに返したのだった。
「じゃあ貴女は結婚しないというのね」
「興味はない」
実に素っ気無かった。そうした話には。
「結婚や交際という。俗世のことにはな」
「では興味があることは」
「政治、そして技術のことだ」
そうしたこと全般だというのだ。
「他にはない」
「ある意味凄いわね。その考えは」
「私はこのドクツの総統だ」
だからこそだというのだ。
「ならば結婚する必要もない」
「じゃあ死ぬまでなのね」
「そうだ。この命が尽きるまでだ」
まさにだ。その時までだというのだ。
「私はこの国の為に働き。そしてドクツが世界を統一するのだ」
「統一帝国ね」
「その為にだ」
グレシア、それにドイツとプロイセンを見てだった。
「頼むぞ」
「わかっている。総統は俺達を救ってくれた」
「今にも死にそうな俺達をな」
ドイツとプロイセンにとっては忌まわしい記憶だ。三年前のことは。
敗戦と賠償金、そして恐慌が彼等を死の淵に追いやっていた。しかしだった。
今はレーティアにより再び立ち上がった。そしてだった。
ここからだ。さらにだったのだ。
「用意はできた。ではだ」
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