最終話 かくして現実は克服される
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定を適用したとして改造を受けたものが2両ありました。W号戦車D型と、V号突撃砲F型です。
この両車両が本来の主砲を外し、ドイツ製対戦車砲Pak41口径漸減砲、いわゆる「ゲルリッヒ砲」を搭載して出場いたしました』
しほも、それのどこが問題なのかと不審に思う。
75-55mmゲルリッヒ砲はティーガー計画においても候補にされた砲であり、W号H型化においても、傾斜装甲車体とともに検討されたいきさつがある。だが……
『この、ゲルリッヒ砲が問題になりました。なぜならゲルリッヒ砲を戦車に搭載する「予定」は存在しないのです』
戦車史に詳しい者たちがざわめき出す。『予定』はあったはずだ。
誰もがそう考えた。
『当時のドイツ軍内部では、W号戦車の強化策として、また後にヘンシェルティーガーとなるVK36.01計画戦車の主砲として、ゲルリッヒ砲を搭載することを考えていたのは事実です。
そしてW号H型の主砲としてPak41牽引砲の戦車砲版、kwk41の設計を開始しました。
しかし、このときすでにドイツ兵器局は、国内で産出しないモリブデンとタングステンを大量に消費し、短時間で射耗してしまうゲルリッヒ砲に見切りをつけておりました。
kwk42の対戦車砲型Pak42が通常砲身でありながら同等の性能を発揮したこと、また48口径75mmのPak40でさえ牽引移動に難儀していたことからPak42以降の対戦車砲の自走化が進められたことにより、ゲルリッヒ砲の存在意義は消滅。
また現実の戦場においても砲身が摩耗したPak41は砲弾の供給も滞ったため、そのまま遺棄されてしまうことが多かったことなどから、kwk41は計画途中で放棄され、ついに日の目を見ることはありませんでした。
つまり、ゲルリッヒ砲75-55mmは、kwk41の設計が中止された時点で「戦車に搭載される予定の部材」ではなくなってしまったのです。そのため大洗女子学園のW号D型およびV号突撃砲F型はルール違反であると判定され、同校は不戦敗と決定しました。
また、戦車道の根幹に関わる当該ルールに違反した大洗女子学園の責任は重大であり、同校による全国高校生大会への参加を翌年度も禁止する処分に処したこと、また本年度当初にさかのぼり、参加許可自体を取り消すことに決したことを、あわせて報告いたします』
島田千代は、ここまで一気によどみなく話した。
話し終わった千代が一礼すると、オーロラビジョンの画面が切り替わり、あぜんとする黒森峰選手団と、全員がすすり泣く大洗選手団を画面の半分ずつで映し、その上にかぶせて『勝者:黒森峰女学園』とのテロップを流した。
「あの無能者めが……」
しほは原野を罵った。しかし、元をただせば自分自身が策を弄した結果に過ぎない。
策を逆手に取られ
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